長年にわたって中高年以降の人々の生活を取材してきた楠木新氏
人生100年を幸せに生きるには健康とお金の対策が不可欠だが、それで十分とは言えない。長年にわたって中高年以降の人々の生活を取材し、著書『定年後』(中公新書)が25万部超のベストセラーになった作家・楠木新氏が語る。
「これまで500人以上の定年退職後の人々に話を聞いてきてわかったのは、老後生活の中核になるのは『人間関係』だということです。健康でお金があっても、人とのつながりがなければ、幸せな老後にはなりません。人間関係はいわば生活を支えるインフラ。これが途切れると、生活のほとんどの要素が同時に弱ってしまいます」(以下「」内は楠木氏)
いつ、どこで、誰と、どうつながり続けるか。楠木氏が指針として示すのは、老後生活を「60~74歳」と「75歳以降」の2つの期間に分けて考えることだ。
「前者は『黄金の15年』と呼ぶべき時代。完全に仕事を離れる人は少数派ですが、家族の扶養負担は軽くなり、自分で使える時間も増える。さらに子供が独立し、住宅ローンの返済も一段落します。この時期を楽しまないでいつ楽しむのかと思うほど条件が揃った時期です。
それを経て迎える75歳以降は、さらに自由度が高まる『プラチナ時代』。自分の楽しみを中心にした生き方を実現できる一方で、本格的な老いも迫ってきます」
黄金の15年からプラチナ時代への移行をスムーズにし、その先の人生をよりよく生きる。そこで求められるのが、不安なく老後生活を送る知恵だ。楠木氏は目指すべき境地を「上機嫌セブンティーズ」と呼んでいる。
「70代になれば仕事を引退して人間関係は減少し、社会での役割も縮小する。失うことがある反面、加齢を自分なりに味わい楽しむ力が必要になります。それが私のいう『上機嫌セブンティーズ』です」
