バンドマンたちが直面する“リアルな現実”(写真:イメージマート)
ライブハウスのステージに立ち、地方遠征をして、いつかフェスやメジャーの舞台へ──。そんな夢を抱いて、ライブハウスシーンで活動するインディーズバンドは少なくない。
ただ、10代や20代前半であれば「まだまだこれから」と思えたバンドマンたちも、20代後半になると、人生の選択を迫られるようになる。就職、結婚、子育てとライフステージが進み、バンドを続ける仲間も年々減っていく。30歳を目前にしたバンドマンたちが直面するリアルな現実を探った。【前後編の前編】
「バンドだけで食べていけないことはわかってる」
都内在住のフリーター男性・Aさん(29歳)は、大学時代にサークルのメンバーと組んだロックバンドを続けている。過去に数多くの人気ロックバンドが出演してきた老舗ライブハウスにも出演した経験がある。
「周りの友達には、フジロックのルーキーステージに出たり、海外でライブをしたりしているバンドもいます。メジャーレーベルと契約して、20代前半で一気に売れた仲間もいる。昔は、『自分たちもそのうち、そうなるはず』という、漠然とした自信がありましたね」(Aさん)
しかし、20代後半になると、状況は変わってきた。
「メンバーの一人が『彼女との結婚を視野に入れて就職する』と言い始めて、本格的に就職活動で忙しくなったんです。その後、別のメンバーが『脱退したい』と言い出して、サポートメンバーを入れて活動することになった。結果、ライブの頻度も落ちましたし、サポートメンバーに払う料金もかさむようになり、バンドの財政も悪化していきました。
昔は自分たちより売れているバンドと対バンすることもありましたが、最近は若手のバンドとブッキングされることが増えました。正直、TikTokなどのSNSでもまったくバズらないし、Xやインスタの反応も、日に日に減っています。ライブの集客を見ても、『自分たちの番はもう終わったのかな』と落ち込む瞬間が増えましたね」(Aさん)
Aさんによれば、ライブは基本的に赤字、CDやグッズを作るにも持ち出しが必要になる。薄給のアルバイトで賄うには限界があり、メンバーとの喧嘩も絶えないという。
「もちろん、バンドだけでは食べていけないことは、とっくにわかっています。でも、ここまで続けたからこそ、今さらやめるタイミングもわからない。やっぱり、バンドってお金がかかるんですよ。毎週のスタジオ代、機材代、交通費、遠征なら宿泊費もかかる。
ライブをすればするほどお金が減るんです。遠征も東京から大阪まで自分たちで車を出して、交互に運転する。免許がないメンバーが後部座席で寝ていたりするとイライラするし、『金がないから宿泊費貸してくれ』『スタジオ代を建て替えてほしい』と金の貸し借りも多く、よく揉めます。でもステージに立つと、やっぱり楽しいんですよね……」(同前)
