中国初の全編AIGCによる長編テレビアニメ『后西遊記』(芒果TVより)
中国経済に精通する中国株投資の第一人者・田代尚機氏のプレミアム連載「チャイナ・リサーチ」。中国初となる全編AI生成の長編TVアニメの登場を踏まえて、中国のAI産業の現在地、ならびに国家としての取り組みについてレポートする。
AI関連、映像コンテンツ制作会社の株価が急騰
中国初の全編AIGC(AIによる自動生成コンテンツ)による長編テレビアニメ『后西遊記』(シーズン1、30回、1回の放送時間は約40分)の放送が8月31日、湖南衛星テレビ、芒果TV(動画配信)で始まった。
2026年第1四半期の新作ショートドラマでは95%がAIGCによる(央視財経、6/25)ほどAIGCによる映像制作は普及している。映画での制作例もあるが、視聴者数の多いテレビアニメでもAIGCが使用されたこと、AIGCの技術水準がテレビアニメ(ドラマ)でも使用できるほど向上したことで今後、映像制作コストが大幅に下がるだろうといった見通しが本土市場に広がり、「后西遊記」の動画配信を行う芒果超媒(300413:創業板)が31日、9月1日の2日にわたりストップ高(創業板銘柄のストップ高は20%)を記録するなど、AI関連の一角、映像コンテンツ制作会社の株価が急騰した。
AIGCによるドラマ制作における最大のメリットは、制作時間が大幅に短縮されることである。現時点での標準的なテレビドラマ制作にかかる時間は3か月ほどであるようだが、これが1カ月程度に短縮できるという。制作に同じ程度の延べ人数をかけたとしても、制作時間が短い以上当然、コストは削減される。演者にかかるコストや、効率化による制作にかかわる人員の減少なども加われば、コストはさらに削減される。AI利用による多少のコスト増を考慮する必要があるとはいえ、うまく工夫すれば、大きなコストダウン効果が期待できよう。
作品の質という点では、実写が難しい映像への表現の拡大や、放送後の視聴者の意見を積極的に取り入れ、適宜作り直したりできるなど変更に関する自由度の高まりといったメリットがある。
もっとも現時点では、技術的には成熟したとまでは言えない。AI演者の表情が硬かったり、感情表現が乏しかったり、セリフが棒読みに聞こえたり、人間味に欠けるといた欠点が依然として存在する。また、4Kあるいはそれ以上の画質の作品は作ることはできず、1シーン30秒を超えるような映像では連続性が保てなかったり、映像が混乱するようなことが起きてしまいかねない。
物理法則を超えるような動作や、たとえば演者の指を6本付けてしまうといったような非論理的な表現が時折出てしまう。とはいえ、こうした未熟な部分があるにしても、技術は急速に進歩している。経験を少しでも多く積むことで克服できる部分もあり、関連産業の発展スピードという点で考えれば、早く実用化すればするだけ、その後の産業発展に有利になるとも言えそうだ。
五カ年計画でAI+アクションを推進
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。
