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【注目トピックス 経済総合】垣間見えた未来(1)【中国問題グローバル研究所】

*10:09JST 垣間見えた未来(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)フレイザー・ハウイーの考察を2回に渡ってお届けする。

※この論考は8月31日の<A Glimpse of the Future>(※2)の翻訳です。

「夏枯れ」とはならなかった今年の夏
英国の伝統的な主流メディア(特にタブロイド紙)は夏の数か月間をしばしば「夏枯れ時」と呼ぶ。北半球のほとんどの政治家が休暇を取るため一面記事は内容が浅く、いつもの激しい政治論争は影を潜める。8月の見出しや記事を調べてみれば、地政学上の新たな動きはほとんどないことがわかるだろう。

トランプ政権下の米国では、大統領が信じ難い行動を取っても、もはや驚くことはなくなった。カナダとの新たな貿易戦争の勃発、オンタリオ湖のばかげた改称、トランプ側近のナタリー・ハープを巡るMAGA系メディアの喧騒など、いずれもトランプ2期目の混乱の1年半を経て日常茶飯事となっている。トランプは依然としてイランとの戦争から抜け出せず、本人は否定しているが、勝利を収めていない。米国はホルムズ海峡を掌握しておらず、この地域でイランが弱体化したわけでもない。最近ではイランとその貿易相手国双方への制裁を通じてイランへの圧力を強めるという脅しが注目されたが、もはや遅すぎて効力を発揮するに至っていない。厳しい経済制裁は軍事作戦を始める前に実施すべきだった。この戦争の進め方自体があまりにも拙劣で、この制裁も、イランをトランプの意のままに屈服させようとする他の試みと同様に間違いなく失敗に終わるだろう。

英国ではこの夏に首相が交代したが、下院が夏季休会中であるため政治論争は限定的だ。欧州の多くの地域でも似たような状況だが、ウクライナ戦争からは依然として目が離せない。ゼレンスキーが軍と国防省指導部の人事変更を巡って圧力にさらされる一方、戦闘の面では、ロシアは毎月推定4万人の兵士を失っているにもかかわらず、新たな領土の獲得には概ね失敗している。プーチンの歪んだ野望のために、あまりにも多くの命が無駄に失われている。

中国については、不動産市場やインフラ建設の過熱を招いた借金バブルの後始末が遅々として進まず、苦境に陥っている。中国の成長は依然として低迷しており、ただでさえ低い政府発表値をさらに下回っている可能性が極めて高い。7月の銀行貸出は予想を下回ったほか、中国から伝えられる多くの話によると、好景気は終わったと中間層は半ば諦めているようだ。消費は続いており店舗やレストランも賑わっているが、1,000元もする中国産白酒が人気だった時代は過ぎ、今売れているのはそれよりはるかに安価な商品だ。大学の卒業生や、本来ならホワイトカラーの仕事を探していたであろう人々は、ブルーカラーの仕事や製造業に就くことになりそうだという現状を受け入れ始めている。数十年にわたる成長がもたらした高い希望は、中国経済の減速という現実に取って代わられつつある。中には自ら進んで「寝そべり族」(社会的成功を目指さず最低限の生活で満足する人々)となり、熾烈な競争から離脱する人もいるが、ほとんどの人は機会が限られる中で最善を尽くし、何とか前に進もうとしている。こうした経済の減速や機会の減少を受け入れる姿勢は、経済学者が言う「中所得国の罠」が現実社会に現れた姿だ。政府が出す数値だけを見るとわかりにくいかもしれないが、人々が肌で感じている変化は否定できない。

未来を垣間見る
トランプの失敗、英国の政治機能不全、中国の経済的苦境は新しい話ではない。代わりにメディアを賑わせたのは欧州全域を襲った異常気象だ。気候変動の影響が日々の生活の中でますます顕著になるという未来を垣間見ることになった。夏に入って以降、英国と欧州大陸のほぼ全域を次々と熱波が襲っている。英国人はよく天気を話題にすることで知られるが、今年はこれまでとは違う。英国をはじめとするほぼ全域で猛暑警報が頻発した。英国はここ数か月の間に6度の熱波に見舞われ、イングランド南部では気温が軽く35度以上に達した。暑いだけでなく、7月を通じて南部ではほぼ雨が降らず、イングランドの7月の降水量は平年の10%ほどだった。当然ながら緑豊かなイングランドの大地は干上がり、芝生は黄色く変色し、焼けて硬くなった。この猛暑では、単に晴れて暑い日が続いただけではない。英国人は「熱帯夜」にも耐えなければならなかった。熱帯夜は夜間でも最低気温が20度を下回らず、睡眠環境、ひいては健康全般に影響を及ぼす。スコットランド北部だけが猛暑による最悪の事態を免れたが、それでも降雨量は不安定だった。ただ、平年より雨は少なかったもののイングランドよりは気温が低く、イングランド南部の灼熱の気候に比べれば一息つけるとあって、多くの英国人観光客は喜んでいた。

欧州大陸はさらに暑く、パリの気温は40度を超えた。スペインに至っては、夏のヒートマップがサハラ砂漠のようだった。このような天候は欧州では異常であり、いずれの国もこうした状況への対応を想定していなかった。近代的なオフィスビルやショッピングモールを除いてエアコンはあまり普及しておらず、多くの住宅やアパートでは設置されていない。とりわけ英国では、住宅は熱を閉じ込めるように設計されており、特に夜間に家を冷やす必要が生じるとは、ほとんどの人が想像していなかっただろう。

この猛暑は単に記録を更新しただけではない。完全なデータや統計はまだ揃っていないが、大陸全体で数万人が酷暑のために命を落としたと見られる。英国でも、近くの川や海に涼を求めた人たちが犠牲になる水難事故が相次いだ。農作物も壊滅的な打撃を受けた。イングランド南西部でリンゴを栽培する農家は、今年は収穫量が極めて少ないため収穫作業さえ行わないという。だが昨年は豊作だった。どちらの場合も収穫が木々に負担をかけ、2年に一度しか実をつけない「隔年結果」を引き起こす可能性がある。そうなれば、今後の作物の管理に問題が生じるのは明らかだ。

ネパールとチベットにまたがるヒマラヤ山脈では、気候が引き起こした衝撃的な事態が今も続いている。映像で見る洪水や土石流は凄まじく、まるでパニック映画のようだ。中国の国境検問所が洪水にのみ込まれる映像は現実とは思えないほどだ。党の力を誇示し人間の矮小さを感じさせるという共産党好みの建物がほんの一瞬で土石流に押し流され、渓谷や町が次々と灰色の濁流に飲み込まれた。すでに数百人の死亡が確認されており、数千人が行方不明となっている。最終的な死者数は不明のまま、犠牲者の大半は遺体が見つかることもないだろう。一部の遺体は100マイル以上も下流のインドで発見されている。原因は当初不明だったが、現在では氷河や永久凍土の融解が地滑りを引き起こし、洪水につながった可能性が高いとされている。氷河や永久凍土の融解は気候変動の影響として珍しくない。

ネパールは土石流による犠牲者など大きな被害を受けたが、夏のはじめには中国南部も台風に伴う豪雨と洪水に見舞われた。中国では洪水が珍しいわけではなく、多くの歴史家は、洪水の管理が中央集権的な中国国家の形成を促す役割を果たしたと考えている。気候変動に関しては今なお科学的根拠を否定する無知で愚かな者もいるが、その影響は十分現実のものだ。欧州北部は涼しいからといって夏の暑さが歓迎されるわけではない。それは数千人の死者や経済の混乱を意味する。映像で見るネパールの洪水は凄惨だが、この夏の欧州の死者数はネパールの土石流による死者数をはるかに上回っている。

「垣間見えた未来(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。

ネパールで大規模な鉄砲水 中国でも土砂災害(写真:新華社/アフロ)

(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://grici.or.jp/7536

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