アンソロピックが公開した成果に市場はどう反応したのか(Getty Images)
AIの急速な進化に伴い、多くの研究分野で新たな成果が出始めている。そのひとつが「AI+バイオ」の分野だ。米アンソロピックが公開した成果に対する市場の反応や米中の同分野研究の現在地とは? また、将来的なAI革命の勝敗の行方を左右するポイントは何か。中国経済に精通する中国株アナリスト・田代尚機氏がレポートする。
AIが研究者に替わり短期間で探索作業を前進
アンソロピックは9月23日、2026年春に設立されたバイオサイエンス研究グループにおける成果を初めて公開した。CRISPR(細菌などがウイルスに対抗するための免疫システム)を思わせるDNA反復配列とそれに連動して働く新しい酵素システム「ART(アレイ関連逆転写酵素)」を特定したと説明している。具体的には949のClaudeエージェントを21.5時間稼働させ、約2.1億トークンを消費して、公開された膨大な遺伝子データの中から20万超のRT(逆転写酵素)クラスターを収集、そこから3564の候補システムを絞り込み、最終的に20の重点対象に収束させたという。
仮説を立てて有望な候補を見つけた段階なので、あくまで初期段階の成果としており、このシステムが本当に知られていない新しい機能を持つかどうか、人類に役立つかどうかは今後、実験で確かめる必要がある。また、同じ検索をさらに10回追加で実行したものの、いずれも反復配列を再発見できなかった(エージェント行動の不確実性の問題)。一部の研究者は大きな発見としてこれを発表すること自体に慎重な見方を示しており、発見の帰属をめぐる議論(コペンハーゲン大学の研究チームは2022年からARTの研究を行っており、未発表データをClaudeに提供していたと主張)もある。こうした点を差し引いて成果を評価する必要があるかもしれないが、それでもAIが研究者に替わり、短期間で探索作業を前進させることができたという点においては、大きな意義があると認めて良いだろう。
この材料を受けて、中国のバイオ関連の一角が上昇している。今後、AIによって遺伝子編集(DNA配列を狙った場所で切ったり書き換えたりする)に対する需要が急速に高まる。臨床試験がボトルネックとなり、中国のCXO(研究開発、製造などの業務を受託する企業)における受注が高まる。さらにインダストリアルチェーン全体にその恩恵が広がるとの思惑が市場関係者の間にあるようだ。
