米国の対中規制に効果はあるのか
今年の政府活動報告では、重点業務として初めて「現代化産業システムの建設を加速させる」ことが明示された。これは、たとえば、半導体の国産化推進、新エネルギー、新エネルギー自動車への代替促進など個別の政策を積み上げるだけではなく、総合的に製造業全体を強化しようといった取り組みである。具体的な内容については以下のように説明している。
製造業における重要なインダストリアルチェーンを取り囲み、そこに質の高い資源を集中させ、発展のカギとなるコア技術獲得の突破口とする。重要なエネルギー、鉱業資源の国内探査開発を強化し、生産量を高め貯蓄量を増やす。伝統的な産業と中小企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させ、(産業の)高度化、AI化、グリーン化(環境への配慮)の水準を引き上げる。フロンティア技術の研究開発、応用を推し進める。物流システムを現代化する。デジタル経済の発展に力を入れ、日常的な監督管理の水準を引き上げ、プラットフォーム経済の発展を支持する──。
米バイデン政権は今年に入り、半導体の対中輸出規制、中国企業への輸出規制などを強化、拡大させているが、こうしたやり方は果たしてどの程度の効果があるのだろうか。
イギリスの経済紙「フィナンシャル・タイムズ」は3月2日、ブログ向け記事としてビル・ゲイツ氏と記者との対談を載せているが、その中でゲイツ氏は「米国のやり方は中国に対して時間とお金をかけさせて自ら半導体を作らせることを無理強いしているに過ぎない。中国が強大な半導体産業を獲得することを阻止することは永遠に叶わないだろう」と発言している(3日、北京日報より)
中国の金融セクターは、資本の面からも、資本の論理を超えた行政権限、更に政治の面からも、国家の強い管理下に置かれている。投資に関しては、政府が投資プロジェクトを認定するが、国家産業ファンドの形での資金投入を含め、国家予算の投入はあくまで呼び水であり、投資プロジェクトに金融機関、企業の資金を集中させることで、投資を拡大させることができる。日米欧とは決定的に異なる条件の下で、全人代、五か年計画などを通じて、トップダウンで緻密な国家建設計画が設計される。中国の国家資本主義はまだまだ成長余地が大きいのではないだろうか。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。楽天証券で「招財進宝!巨大市場をつかめ!今月の中国株5選」を連載するほか、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。