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楽天・三木谷浩史社長の「一発大逆転シナリオ」が始まった 通信ビジネス界最大の「商談会」に密着

商談の合間は息つく暇もなく資料に目を通していた

商談の合間は息つく暇もなく資料に目を通していた

「どうやら、できちゃったみたいだぞって感じでしょ」

 用を足し終えた三木谷は満足げに言った。

 いま、楽天モバイルにはもう一つの追い風が吹いている。「米中摩擦」だ。中国の台頭に神経を尖らせる米国は、中国の通信大手、華為(ファーウェイ)を自国市場から締め出した。そこへロシアのウクライナ侵攻。西側諸国はロシアへの経済制裁に踏み切った。世界情勢がきな臭くなる中、安全保障の要となる通信インフラで中国企業への依存を減らしたいという思惑が各国に働いている。かといって欧米の老舗に戻れば機器のコストが跳ね上がる。そこに登場したのが楽天モバイルだ。「試してみたい」と考えている国は少なくない。

ギャンブルは吉と出るか

 実は筆者が三木谷とバルセロナを訪れたのはこれが初めてではない。2016年の11月、三木谷から突然、電話が入った。

「これからバルセロナに行くんだけど、一緒に来ない?」
「何しに行くんですか」
「まだ言えないけど、大西さんの好きなサッカー絡み」

 矢も盾もたまらず自宅を飛び出した。バルセロナでサッカーといえば当時、世界最強と謳われる名門、FCバルセロナ(バルサ)に違いない。案の定、バルセロナの空港でプライベートジェットを降りた三木谷が車で向かったのはホームスタジアム「カンプ・ノウ」だった。

 その一室で、三木谷はバルサ会長のバルトメウ(当時)とサインを交わし、4年+1年の戦略的パートナーシップ契約を結んだ。5年で約300億円の大型契約だ。

 名門バルサの胸に日本企業の名前が躍る。そのことには強い興奮を覚えたが、ビジネスとしての意味はよく分からなかった。この時の楽天の海外事業といえば通話アプリの「バイバー」と米国のキャッシュバック・クーポンサイトの「イーベイツ」くらいだったからだ。

 だが6年経って、ようやくその意味が分かった。日本のベンチャー企業が「完全仮想化に成功した」と言っても、すぐには信用されなかっただろう。バルサの胸で5年間「Rakuten」の文字が躍動した結果、世界の企業が「ああ、あのRakutenか」となる。バルサとの調印を終えた後、三木谷はこう言っていた。

「プロ野球に参入した時、みんなにバカにされたけど、あれで楽天は全国区になった。同じことを今度は世界レベルでやる」

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