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電車の「定員」や「混雑率」はどう決まる? 山手線は混雑情報をリアルタイムで提供

東京メトロ千代田線の通勤電車(16000系)の車内。座席にロングシートを採用し、立って乗れる床面積を増やすことで、1両あたりの定員を増やしている

東京メトロ千代田線の通勤電車(16000系)の車内。座席にロングシートを採用し、立って乗れる床面積を増やすことで、1両あたりの定員を増やしている

 鉄道は、多くの人にとって交通の手段としてだけでなく、趣味や娯楽の対象としても親しまれており、ときに人々の知的好奇心を刺激してくれる。日本ではラッシュ時の通勤電車の混雑が話題になることも多いが、その「混雑率」はどのように決められているのか。交通技術ライターの川辺謙一氏による連載「鉄道の科学」。第10回は「電車の定員」について。

戻ってきた通勤電車の混雑

 大都市圏を走る通勤電車では、朝夕のラッシュによる混雑がコロナ禍前の状況に戻りつつあります。政府による外出の規制がなくなったことで、職場に通勤する人が増え、鉄道を利用する人が増えたからです。

 こうした混雑状況を示す指標には、混雑率というものがあります。混雑率は、定員に対する乗客数の割合であり、値が大きくなるほど混雑が激しいことを意味します。

 ここでいう定員とは、鉄道車両ごとに定められた「乗車できる標準的な乗客数」であり、「サービス定員」とも呼ばれます。

 車内にリクライニングシートを配置した特急電車や新幹線電車では、車内に配置された座席の数が定員となります。乗客全員が着席できることを前提として設計されているからです。いっぽう通勤電車では輸送力が求められるので、座席の数だけでなく、立って乗る人の数の標準値も定員としてカウントします。

 それでは、通勤電車の定員はどのように決まっているのでしょうか。今回は、その謎に迫ってみましょう。

JISが定義する定員

 まずは結論から言います。日本では、鉄道車両の定員の定義が日本産業規格(JIS)の「JIS E 7103-2006」によって決まっており、通勤電車の1両あたりの定員は、次に示す【1】と【2】の和で示されます。

【1】座席定員
【2】立席定員

【1】の座席定員は、座席(鉄道では腰掛と呼ぶ)に座れる人の数です。通勤電車では、進行方向に長く延びる「ロングシート」と呼ばれる座席がおもに使われており、この長さを乗客1人が占める長さ(430mm)で割った値の合計が座席定員となります。ただし実際は、430mmではやや狭いので、430~460mmにしています。

【2】の立席定員は、車内で立つ人の数の標準値です。車内の床面積(座席の床面積と座席前の250mmの床面積を除く)を、乗客1人が占める標準的な面積(0.3平方メートル)で割った値と定義されています。つまり、立席定員は、乗客が立つことができる部分の床面積で決まるのです。なお、除外される「座席前の250mmの床面積」というのは、座った人の脚が占める部分のことです。

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