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10月から始まるインボイス制度 免税事業者が今後の消費税支払いを覚悟して登録すれば「2割特例」「簡易課税制度」も利用可

インボイス制度で適格請求書発行事業者に登録するメリット・デメリットは?(イラスト/大野文彰)

インボイス制度で適格請求書発行事業者に登録するメリット・デメリットは?(イラスト/大野文彰)

 今年10月からインボイス制度がスタートする。個人事業主が適格請求書発行事業者に登録しないと、どんなデメリットがあるのか? 実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。

【相談】
 個人事業主として仕事をしていますが、10月から始まるインボイス制度についてお聞きします。登録するかどうか迷っているのですが、登録しないと仕事先と取引ができなくなると聞きました。本当に取引ができなくなったらとても困ります。インボイス制度の内容やメリット、デメリット、登録しない場合の罰則について教えてください。(東京都・39才・自営業)

【回答】
 消費税は事業者の行った資産の譲渡や役務提供について課税されます。

 例えば、生産者が50円で卸問屋に物を売れば消費税5円を付けて55円の支払いを受け、内5円を消費税として納税します。卸問屋はこれを小売店に70円で売るときには7円の消費税分の支払いを店から受け取りますが、消費税としてはそこから生産者に支払った5円を控除して2円を納税します。店が消費者に100円で売れば消費者から10円の消費税分をもらいますが、納める消費税は卸問屋に支払った7円を控除して3円になります。

 こうして国には合計10円の消費税が入り、直接課税されない消費者が実際には10円全部を負担するという仕組みになっています。このように事業者は、仕入れたときに支払った消費税を自分が受け取る消費税額から控除して納税するわけですが、これを仕入税額控除といいます。事業者にとって消費税額を計算するうえで仕入税額控除は極めて重要です(ただし、納税義務を免除される小規模な免税事業者〈個人なら前々年、法人なら前年の売上が1000万円以下の事業者〉は除きます)。

 消費税率は商品により10%と8%に分かれているので、税率ごとに区分した請求書を仕入先からもらうことで現在はこの控除ができます。

 しかし、今年の10月に開始されるインボイス制度では、仕入先から適格請求書をもらわないと控除が認められなくなります。そしてこの適格請求書は、税務署で適格請求書発行事業者として登録された事業者でないと発行できません。登録は任意となっており、罰則はありません。

 制度スタート後、事業者は、売り先(買主)から適格請求書の発行を求められるようになります。登録しないと顧客から取引を見直され、営業上不利益になる可能性があります。そのため、公正取引委員会は取引の見直し自体は直ちに問題ではないが、「優越的地位の濫用」に該当する行為をしないように注意喚起しています。

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