森口亮「まるわかり市況分析」

相場格言「5月に売れ」には統計的な根拠あり 「株式市場の季節性」を踏まえた投資戦略

8~9月に大きな暴落が多い

 夏の長期休暇や、海外ファンド勢の決算なども絡み、8月から9月にかけて、日本株の売買の約7割を占める「海外投資家」の買いが減る傾向があります。

 三井住友DSアセットマネジメントの、2013年から2022年の10年分の海外投資家における月間の売買動向のデータを踏まえて、検証してみましょう。買い越し回数と売り越し回数を確認すると、8月は全10回のうち9回が売り越し、9月は全10回のうち8回が売り越しとなっています。他の月と比較して、海外投資家の買いが入りづらい傾向が見えてきます。

 なお、同統計上、最も買い越しが多い月は4月で、全10回のうち9回買い越しとなっています。2023年4月第2週では、週間で1兆円を超える大きな買い越しとなりました。海外投資家の買いや売りにも偏りがあることも把握しておきましょう。

 歴史的な株価変動を見ると、8~9月に暴落が多いことがわかります。欧州通貨危機(1992年9月)、ロシア危機(1998年8月)、 同時多発テロ(2001年9月)、パリバ・ショック(2007年8月)、リーマン・ショック(2008年9月)、チャイナ・ショック(2015年8月)などです。先ほど述べたように、8月は市場参加者が少なく、9月にかけて海外投資家の買いも減少する傾向があるため、日本株もショック安に繋がりやすいのではないか、と分析しています。

季節性を踏まえた投資戦略

 ここまで見てきたように、日本株は夏から秋にかけて下がりやすい、8~9月は海外投資家の売り越しが多い、同期間は暴落が多い、という3つの特徴から、私は以下のような投資戦略を考えています。

【1】5月中にはポジションを減らし、現金比率を増やす
【2】6~9月は新規のポジションを控え、買い余力を維持する
【3】もしも9月に暴落がきたら本命株を買う

 特に重要なのは、【3】の「暴落時に本命株を買う」というアクションです。暴落というのは、業績の良し悪しに関係なく、ショック安につられてどの銘柄も売られるため、優良銘柄の数少ない買いチャンスにつながることが多いです。

 正直なところ、暴落は来てほしくはないですが、悲観相場の中でリスクを取るためには、暴落時に買う株(本命株)を、事前にある程度、決めておく必要があります。また、しっかりと企業分析をして、理解している株でなければ、持ち続けることも、下落時に損切りをすることもできないものです。

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