岸田政権の財政政策は、首相側近の宮沢洋一・自民党税調会長、木原誠二・官房副長官、村井英樹・首相補佐官という財務官僚出身の“増税3人衆”が中心になって決めていることは自民党内ではよく知られている。国民をサミットに注目させ、その裏では首相と財務省、財界が一体となって、着々と“隠れ消費増税”のレールを敷いている。経済ジャーナリストの荻原博子氏が語る。
「政府の財政審議会の議論を見ると、少子化対策を手厚くするために医療費、介護の負担増やサービス低下などで高齢者に過度な負担を求め、あげく、年金生活者が苦しくなる消費増税まで道筋をつけようとしている。
なぜ高齢者なのか。政府は『高齢者はお金を持っているだろう』と考えているからです。現役世代はすでに税と社会保険料で家計はギリギリで貯金もできない状態で、さすがにここからは取りにくい。かといって働いていない子どもに負担させることはできない。だから高齢者に出してもらおうと。
確かに、統計上は『老後のために』とコツコツ蓄えてきた高齢者のほうが現役世代より資産を持っているかもしれませんが、それはあくまで平均値です。高齢者全体がお金を持っているわけではないし、年金だけでは生活できずに働かざるを得ない人は大勢いる。しかも物価高で苦しんでいる。政府はそういう層にも容赦なく少子化対策の負担を強いようとしている」
そのうえで、政府の矛盾をこう指摘する。
「少子化対策は必要だと思うが、高齢者にそれほどの負担を求めるというなら、その前に政府はもっとお金の使い道を考えるべきです。安倍政権時代に一般会計予算が100兆円を超えてそんなに使うのかと驚いたが、岸田政権では114兆円に膨らんだ。あっという間に10兆円も20兆円も予算が増えている。
高齢者からお金を取る前に、歳出を抑えてその予算から少子化の財源を出すことは十分可能なはずです。岸田さんがそれをしなければ、“子どものために使うから”と孫世代を人質にして年寄りをいじめるような政策ということになります」
まさにその通りだ。岸田首相が「支持率が上がった」と図に乗って少子化対策を名分に高齢者いじめを進めるなら、必ず手痛いしっぺ返しを受けることになる。
(了。前編から読む)
※週刊ポスト2023年6月2日号