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影響力を持ったまま逃げ切りか ビッグモーター、社長・副社長が辞任しても“兼重父子が支配”の現状

ビッグモーターは和泉伸二・社長(右)の下で体質改善できるか(時事通信フォト)

ビッグモーターは和泉伸二・社長(右)の下で体質改善できるか(時事通信フォト)

 顧客の愛車を傷つけて保険金を水増し請求していたことが明らかになった中古車販売大手のビッグモーター。前代未聞の不祥事が発覚して、兼重宏行社長(71)と息子の宏一副社長(35)が7月26日付で辞任し、後任に就いたのが和泉伸二・新社長だ。

 新体制となり、和泉新社長はさっそく「改革の第一弾」として、それまで社内で活用されていたLINEアカウントの削除を社員に指示し、国交省のヒアリングを受けて「再発防止を粛々と進める」と強調した。はたして、創業家の兼重父子は同社から完全に去るということなのか──自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏が語る。

「同社には社長派・副社長派だった幹部がそれなりに残っている中で、どこまで体質・風土の変革ができるのかは疑問です。そもそもビッグモーターの親会社は兼重家の資産管理会社『ビッグアセット』で、同社の株を100%保有する大株主です。そういう意味では現時点でも兼重父子がビッグモーターを支配する形になっています」

 会見でもこの株主関係について問われた兼重前社長は、「経営に影響力を与えるような行動を取るつもりはない。新経営陣に思う存分やってもらう。その結果として利益が出れば株主として非常に嬉しいことですから、そういう関係がベストではないかと今は思っているが、今後それが問題であればまた改善していきたい」と述べた。

「世論に押されて幕引きを図るために辞任したのだと思いますが、事実上の影響力を持ったまま逃げ切った形にも見えます。ほとぼりが冷めるには時間がかかるでしょうが、その間も兼重父子はビッグモーターのオーナーとしての地位は保ったままということになります。宏一氏はまだ30代ですから、いずれ戻ってくる可能性もゼロではないでしょう」(加藤氏)

 ビッグモーターは2015年に本社を東京都港区に移転したが、それにあわせるように兼重家は2016年に取得した土地に「20億円」ともいわれる邸宅を構えた。東京都目黒区の高級住宅街にそびえ立つ豪邸は、ソニー創業者の一人である盛田昭夫氏がかつて暮らした邸宅の跡地に建てられていた。

「土地を売却した頃の盛田家を振り返ると、1990年代から長男が手掛けた様々な事業で躓き、盛田家が保有するソニー株を失い、2013年には関連財団も解散。そうした資産処理がひと段落した頃のように映ります」(『経済界』編集局長の関慎夫氏)

 一代で世界的企業を創り上げた盛田昭夫氏の盛衰を追うように、一代で地方から全国規模の中古車販売大手へと成り上がりながら渦中の人となった兼重父子──。日本を代表する名経営者への道は険しかった。

※週刊ポスト2023年8月11日号


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