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岸田首相の「食料安全保障」は絵に描いた餅 決定的に欠落している“日本農業最大の弱点”への危機感

人口減少時代に即した農業経営モデルとは

 まず手を付けるべきは、農作業の徹底的な合理化で、仕事の総量を削減し、少人数でも収益が増える経営モデルを確立することである。経営の将来展望を描くことができなければ、若い世代の就農は思うように進まない。

 そのためには、人口減少時代に即した生産基盤の構築が必須となる。生産力を向上させる新たな農機具の開発も必要となるだろう。経験と勘に頼った“前時代的な農業”から、データに基づく農業への転換も必要だ。データを使って新規マーケットの開拓やニーズを掘り起こすのである。気候変動に左右されない栽培方法や新種開発を進めることも求められる。これらを生産者任せにせず、政府が率先して実施することだ。

 人口が減っていくのだから、食料品の必要総量も減っていく。国民の高齢化で消費者が求める品種も変わるだろう。そうした人口構造の変化も織り込みながら食料安全保障の強化を考える必要がある。

 人口減少による変化や影響を十分に踏まえているとは思えない「新たな展開方向」をベースとして「農政の転換」を唱えてみたところで、出てくる対策は絵に描いた餅に終わる。人口激減後の未来を見据えた「真の食料安全保障」の強化が求められる。

【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。主な著書に、ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)のほか、『日本の少子化 百年の迷走』(新潮選書)などがある。

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