キャリア

【ジェンダーブラインド】男性上司は女性部下とどう接するべきか?「政治的に正しい」振る舞い方の高すぎるハードル

 白人の上司が有色人種の部下を評価するときも同じで、個人としては人種に関係なく公平に評価しつつ、社内に(無意識の)構造的な人種差別があるならば、それによって不利な立場を強いられないよう、ある種のアファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)が必要になるかもしれない。

 管理職のなかにはこうした難易度の高いタスクをこなせるリベラル・リテラシーの持ち主もいるかもしれないが、「政治的正しさ」のハードルが上がれば上がるほど、そこから脱落する者が増えていくことは避けられない。そのうえこれはジェンダーや人種問題だけでなく、宗教、性的指向、障害などすべての領域で、一人の人間に対して、「個人」と「集団(アイデンティティ)」という異なる属性を同時に扱うことが求められるのだ。

 そう考えれば、現在のポリティカル・コレクトネスに適応できる者がごく一部しかいないのは不思議でもなんでもない。リベラルな社会は多様性を重視するが、リベラルの基準に達しない者は徹底的に排除されることになるだろう。

(橘玲・著『世界はなぜ地獄になるのか』より一部抜粋して再構成)

【プロフィール】
橘玲(たちばな・あきら)/1959年生まれ。作家。国際金融小説『マネーロンダリング』『タックスヘイヴン』などのほか、『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『幸福の「資本」論』など金融・人生設計に関する著作も多数。『言ってはいけない 残酷すぎる真実』で2017新書大賞受賞。リベラル化する社会をテーマとした評論に『上級国民/下級国民』『無理ゲー社会』がある。最新刊は『世界はなぜ地獄になるのか』(小学館新書)。

関連キーワード

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。