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【ジェンダーブラインド】男性上司は女性部下とどう接するべきか?「政治的に正しい」振る舞い方の高すぎるハードル

 皮肉なのは、こうした「人種教育」が逆効果になっていることだ。実験によると、カラーブラインドの思考態度を教え込まれた子どもは、明らかに黒人という理由でいじめられた事例(他の子どもにわざと転ばされたなど)に対して、それを差別だと判断する割合が低かった。カラーブラインド群の子どもたちの説明を聞いた教師も、問題行動は軽度であると判断し、標的とされた子どもを保護するために介入する度合いが低かった。

 これらの実験を受けて、黒人女性の社会心理学者ジェニファー・エバーハートは、「カラーブラインドは、その意図とは全く正反対のもの、つまりは人種的不平等を促進していた」と結論する。「それは、マイノリティの子どもたちに、彼らが耐え忍ぶ苦痛が気づかれない環境で、一人で闘うことを強いている」のだ。

あまりにも高いハードル

 差別をしてはならないと強く思うほど、差別を意識するようになってしまう。これは困惑する状況だが、そんなときのもっとも合理的な行動は、相手から距離を置くことだろう。マイノリティと同席する機会を避ければ、「差別だ」と批判されることもないのだから。

 それでもグローバル空間では、マジョリティとマイノリティが一緒になる機会がしばしば生じる。そんなときに一般に使われるのは、「あなたの属性は私にとってはなんの意味もない」というブラインド戦略だ。これはパーティなどの雑談では役に立つかもしれないが、「構造的差別」が問題とされている場面では、逆に「差別的」と批判されかねない。マジョリティにとって「政治的に正しい」態度とは、個人を属性で判断しないと同時に、集団としては属性に配慮することなのだ。

 問題は、このような複雑な対応がはたして可能なのか、ということだろう。

 男性の上司が女性の部下を評価するときは、「女だから」などと考えずに(ジェンダーブラインドで)実績のみを基準に公平に評価しなければならないが、生理や妊娠のような女性特有の困難や、子育てのような不均衡な性役割分業が仕事の障害になっている場合には、そうしたジェンダーギャップに適切な配慮が求められる。

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