キャリア

【超高齢×低欲望社会】日本に暮らすシニア世代こそ問われる「君たちはどう生きるか」

シニア世代が人生を楽しめれば経済は一気に良くなる

 児童文学者・吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』が2017年に漫画化されてブームになった。さらに2023年7月には、スタジオジブリの宮崎駿監督による同タイトルの新作アニメ映画も公開された。ブームの端緒となった小説は子供たちに生き方や人生の意味を考えさせる作品だが、この書名の問いは、むしろ今のシニア世代にこそ問われるべきかもしれない。

 かねて私が主張しているように、シニア世代が自分の人生を楽しめば楽しむほど、2000兆円を超えている個人金融資産が市場に出て世の中のお金が回り出し、おのずと経済が活性化されて家計も国の経済も一気に良くなることは間違いない。

 日本は、世界一の超高齢社会であると同時に、単身(1人暮らし)世帯が全体の4割に達しようとしている「ソロ社会」だ。2020年の国勢調査によれば、日本の総世帯に占める単身世帯の割合は38%で、1980年の19.8%からほぼ倍増した。かつて「標準世帯」と呼ばれた夫婦と子の世帯は、もはや25%でしかない。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の将来推計でも、単身世帯は2040年に4割となり、その一方で夫婦と子の世帯は2割になると見込まれている。

 そういう“課題先進国”ニッポンは、それらの課題に対する問題解決策を世界に先駆けて提示すべきなのだ。

 私はこれまで「アタッカーズ・ビジネススクール(ABS)」や「ビジネス・ブレークスルー(BBT)大学院・大学」を通じて、1000を超える起業を支えてきた。今も「構想力講座」などを主宰して新たな事業を生み出すべくアイデアを掘り起こしているが、その私から見て、いま最も有望な事業領域が、この日本のシニアを対象としたビジネスだと考えている。

(大前研一・著『「老後不安」を乗り越える シニアエコノミー』より一部抜粋して再構成)

【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『「老後不安」を乗り越える シニアエコノミー』(小学館新書)など著書多数。

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。