大前研一 「ビジネス新大陸」の歩き方

大前研一流思考法「もしもビッグモーターの問題解決を任されたらどうするか」

企業の現在進行形のテーマを採り上げて、自分がリーダーだったらどうするかを考える(イラスト/井川泰年)

企業の現在進行形のテーマを採り上げて、自分がリーダーだったらどうするかを考える(イラスト/井川泰年)

 経営コンサルタントの大前研一氏は、中古車販売大手「ビッグモーター」騒動など、現在話題になっている企業の経営課題や問題の解決策などを考えることがビジネススキルの向上に繋がるという。「大前研一流思考法」を紹介しよう。

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 私が学長を務めている「ビジネス・ブレークスルー(BBT)大学」には「RTOCS(Real Time Online Case Study)」という授業がある。これは従来のビジネススクールの教科書に載っているような過去の事例ではなく、今まさに我々が目にしている企業の「現在進行形」のテーマを取り上げて「もし自分が○○だったら」と仮定し、社長などリーダーの立場から今後の具体的な打ち手を1週間で考える──ということを毎週繰り返すBBT大学独自のケーススタディだ。

 その効果は絶大だ。卒業生の多くは給料も役職も顕著に上がっており、役員に昇進した人も少なくない。

 日本人のビジネスパーソンの大半は、居酒屋などでグダグダと会社や上司の愚痴を言う一方、会社からリーダーやマネージャーに指名されたら、その時に初めて「どうしようか?」と考える。だが、昇進後に成果を出す人は、往々にしてそのポジションに就く前から入念に準備をしている。

 たとえば、世界的に有名な指揮者の場合、前任者の引退でトコロテン式に大オーケストラの指揮者になった人はほとんどいない。レナード・バーンスタイン氏も小澤征爾氏もズービン・メータ氏も、当初の指揮者が突然のアクシデントで降板し、急遽、代役としてタクトを振らせてみたら圧倒的な力を見せて飛躍のきっかけをつかんだ。それまでに大オーケストラを指揮するだけの十分な準備をしていたから、そういう評価を得ることができたのである。

 私自身、マッキンゼーで最初に頭角を現わす契機となったのは、某重工業会社の神奈川県の工場でプレゼンテーションの“リリーフ登板”をしたことだ。

 当時は、日立製作所の原子炉設計者から畑違いのマッキンゼーに転職してまだ2年目。その会社に派遣されていたチームは外国人ばかりで、唯一の日本人で新人の私は通訳係だった。外国人スタッフは東京から車で通い、私は従業員宿舎で寝泊まりしていた。

 すると2月のプレゼンテーションの日に大雪が降り、外国人スタッフが来られなくなった。しかし、すでに工場の会議室には、課長以上50人余りの幹部が全員集まっていた。普通なら、プレゼンテーションは中止である。だが、私はコンサルティングについて日々勉強を重ね、各チームがまとめたレポートもすべて読んでいたから、中止せずに平然と自分1人でプレゼンテーションを行なった。結果、トップの所長から「あなたの説明のほうが外国人よりわかりやすい」と褒められ、以後、その会社には約20年にわたってお世話になった。

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