「このまま閉館してしまうのでは…」山の上ホテル休業発表で“再開時期未定”が呼ぶ憶測　ホテル側の見解は

現地は「4時間待ち」の活況

　休業前に創業86年の歴史を感じておこうと、記者は10月の某週末に山の上ホテルを訪れた。目当ては地下1階の「コーヒーパーラーヒルトップ」で創業当時のメニューを復刻したというプリンアラモードだ。数々の文豪が口にした逸品に違いない。

　JR御茶ノ水駅からゆるく下る明大通りの途中から、西に伸びる吉郎坂を登りきった場所に「山の上ホテル」はある。ロビー階には喫茶室があり、ゆったりとした革張りのソファーが並んでいる。その手前の部屋の本棚には伊集院静氏や田辺聖子氏など、このホテルを愛した作家の作品が並んでいた。

　地下1階のコーヒーパーラーヒルトップは、休業宣言後の週末ということもあって客が殺到しているようで、整理券を発行しての対応だった。受け取った整理券のQRコードをスマホで読み込むと、「あと49組　目安時間約1470分」と表示され驚いた。

　スタッフの説明によると、1組30分計算で表示しているだけで、本当に1470分も待たされるわけではないという。とはいえ「だいたい4時間（待ち）くらいですね」と告げられた。歩いて15分ほどの神田古書店街で時間を潰し、ホテルに戻った後にようやく「復刻　山の上デザート　プリンアラモード」（2000円）にありつくことができた。帰る頃にはすっかり日が暮れていた。

　文章を書いて生活しているからには、将来は山の上ホテルにカンヅメにされながら素晴らしい作品を書き上げたい、などと若い頃は思っていた。そんな機会のないまま年月は過ぎてしまったが、山の上ホテルには是非ともリニューアルオープンを果たしてもらい、その暁には若い頃の願いを叶えられるよう、精進したいと思っている。（了）