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【国立科学博物館の舞台裏】“モグラ博士”が教えてくれる「美しさを保つ剥製の秘密」「博物館における標本の意義」

コウベモグラの仮剥製

コウベモグラの仮剥製

 それらの標本は、歴代のキュレーターが長年にわたって収集したものをきちんと保管・登録し、誰でもいつでも利用できるよう開放されているという。

「“博物館の本質は収蔵庫である”という考えに基づいた『研究博物館』に初めて触れた経験でした。それと同時に、“博物館とはなんぞや”を考えるきっかけにもなりました。

 標本の重要性を確信すると同時に、“自分はどんな研究者になるべきか”を自問した。『標本バカ』になった瞬間ですね(笑い)」

モグラ博士の圧巻コレクション

「これがぼくのモグラコレクションです」と言って、川田さんが引き出しを開けると、形よくそろった標本モグラがびっしり! ここは川田さんが手がけた小動物の標本室。

「モグラだけで2000~3000点……もっとあるかな? これはぼくが愛知県で捕獲したコウベモグラ、こっちは系統育成されたジャコウネズミの家族。そしてこっちは……」と、もう止まらない。

「仮剥製」と呼ばれる研究用の剥製は、哺乳類の場合、手足を伸ばした形状で作るのが基本。調べやすく、収蔵効率もいい。

「ぼくの一日は、ほぼ剥製を作っているか、骨を洗っているか。標本作りに明け暮れています。仮剥製は、お腹を切って中身を抜き出し、中に綿を詰めて縫い合わせるのですが、モグラ1匹なら15分くらいでできますね。1日20個以上の仮剥製を作れる人は、そうたくさんはいないと思います(笑い)」

【国立科学博物館】
 1877(明治10)年に創立された自然史・科学技術史に関する総合科学博物館。約500万点の標本・資料を有し、「調査研究」「標本・資料の収集・保管・活用」「展示・学習支援」という3つの活動を軸に事業を行う。上野公園内にある上野本館をはじめ、茨城県つくば市の筑波研究施設(展示なし)と筑波実験植物園、東京・白金台の「附属自然教育園」の3地区で構成される。

 上野本館は日本館・地球館の2棟に分かれ、展示総数は約2万5000点。常設展や企画展に加え、年数回特別展が行われる。

【地球館】
「地球生命史と人類」をテーマに、生命が誕生と絶滅を繰り返しながら進化してきた道のりや、世界中に分布する多様な生物たち、科学技術の道程などを紹介する。展示室は地下3階~地上3階まであり、どこからでも自由に回れるようになっているが、どこから見てよいのかわからないという人は、ホームページ内の「おすすめコース」を参照のこと。

【日本館】
 テーマは「日本列島の自然と私たち」。日本列島の生い立ちや日本における人類史などを、標本や人型模型を使って辿る。1931(昭和6)年に完成したネオルネサンス調の建物(国指定重要文化財)も見応えがある。忠犬ハチ公や南極観測隊に同行したジロの剥製も展示されている。展示室は地下1階~地上3階。

【住所】上野本館 東京都台東区上野公園7-20
【開館時間】9:00~17:00(入館は16:30まで)
【休館日】月曜(月が祝日の場合は火曜)、年末年始(12/28~1/1)、くん蒸期間(6月下旬)
【料金】一般・大学生:630円
65才以上および18才未満、障がい者のかた、各種会員(友の会会員、リピーターズパス所有者、賛助会員、大学パートナーシップ入会大学の学生及び引率の教職員):無料 特別展は別料金

後編につづく

取材・文/佐藤有栄 撮影/竹崎恵子

※女性セブン2023年11月16日号

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