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【国立科学博物館の舞台裏】“モグラ博士”が教えてくれる「美しさを保つ剥製の秘密」「博物館における標本の意義」

“モグラ博士”こと研究者の川田伸一郎さんが国立科学博物館が収蔵する標本の意義について解説

“モグラ博士”こと研究者の川田伸一郎さんが国立科学博物館が収蔵する標本の意義について解説

 今夏に立ち上げたクラウドファンディングが、開始から約9時間で目標額の1億円に到達し、現在8億円超え。改めてその存在価値が注目された「国立科学博物館(以下・科博)」。一度や二度では見尽くせない展示の数もアツいが、それ以上に“アツい”のは、舞台裏で働く研究者だった! 今回は科博の筑波研究施設の自然史標本資料棟に潜入。“モグラ博士”の異名を取るモグラ研究の第一人者で、動物研究部研究主幹の川田伸一郎さんに話を聞いた。【前後編の前編。後編につづく

 東京・上野恩賜公園の一角にそびえる巨大なシロナガスクジラ像。これが“科博”のシンボルだ。修学旅行やデート、家族旅行など、人生の折々で科博を訪れる機会があるが、大型動物の剥製や深海生物など、大人でもワクワクする展示が多く、何度来ても新鮮な気持ちになる場所だ。

約500万点の標本・資料を守れ

 国内随一の総合科学博物館として約500万点ものコレクション(標本・資料)、六十数名の研究者を有する科博。そのミッションは展示のみならず、「調査研究」「標本・資料の収集・保管・活用」など広範囲に及ぶ。

「研究に不可欠な標本は二つと同じものがありません。入手可能なうちに保管する必要があるため、年間数万点という単位で増えていきます」と、科博広報担当者は語る。

 人出も戻った科博だが、3年にわたるコロナ禍での収入減、光熱費や物資の高騰などで、科博の根幹である標本・資料の収集・保管が危ぶまれる事態に直面していた。今回行った「かはく史上最大の挑戦」と銘打った1億円クラウドファンディングは、その打開策として敢行したのだ。

 異例の試みにさまざまな意見もあったが、「貴重なコレクションを守って」「子供の頃から大好きな博物館を助けたい」と支援が集まり、現在までの支援総額は約8億1304万円に上る(10月26日現在。支援は11月5日まで)。

 この反響を、同館の研究者はどう受け止めたのだろうか。

「それほど多くのかたが科博を大切に思ってくださっていて、うれしかったです。ますます標本の管理・収集に力を入れたいと決意しました」

 と、動物研究部研究主幹の川田伸一郎さん。

 常設展示物の総数は約2万5000点だが、これでも全コレクションのわずか1%に満たない。残りの膨大なコレクションはどこにあり、研究者はどう活用しているのか?

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