親が亡くなった後の実家をどうするか、そのまま放っておくと近い将来、「負動産」となり、大きな負担となりかねない。だからこそ、家族で「実家じまい」の話し合いを進めなくてはならない。著名人でも「実家じまい」で苦労した経験を持つ人は少なくない。
経済アナリスト・森永卓郎さん(66)の両親が暮らしていた東京・高田馬場のマンションも、10年以上にわたって空き家状態が続いてしまったという。森永さんが言う。
「2000年に母が亡くなって独り身になった父は、埼玉・所沢の私の家で一緒に暮らす選択をしました。ただ、一人になれる場所を残したかったのか、父はマンションを引き払わなかった。固定資産税や光熱費の年20万円ほどが、ずっと父の口座から引き落とされていました」
森永さんの父親は2006年に脳出血で要介護4の状態になり、在宅介護の後に老人保健施設に入所。2011年に亡くなった。
「父が倒れて以降は私が月に2~3回行って、溜まった郵便物を部屋に放り込むだけに。父が亡くなった時、部屋は郵便物の山になっていました」
そう話す森永さんは、同居を始めた時に実家を売却しておくべきだったと反省しているという。
相続の手続きも面倒に
「早めに処分しておけば、父の死後の相続の手続きはだいぶ楽になったはず。相続税の申告に際して非常に面倒だったのが『不動産の鑑定』です。
私は、申告手続きをすべて自分でやろうとしたのですが、実家マンションには飛び地の駐車場があって、その評価方法がよく分からなかった。税理士に依頼したところマンション以外の資産評価もやり直すと言い出し、報酬額が跳ね上がりました。交渉で値引きしてもらったが、それでも100万円の追加出費でした」
マンションは森永さんの弟が相続したが、すぐには売却されなかった。
「相続時に仙台在住だった弟は、東京に転勤になった時に実家マンションに住むつもりだったようです。しかし、転勤先が長野になったため、5年後に売却。父が生きていた時の維持費からすると、5年で100万円ほどの出費になったはずです」
森永さんは自身の経験から、「思い出があるからといって使わない不動産を持ち続けると、どんどん維持費が持ち出しになる。それは避けなくてはならない」と強調した。
※週刊ポスト2023年12月22日号