大前研一 「ビジネス新大陸」の歩き方

富裕層の資産寄付制度導入なら日本は財政最優等国になる

 野村総研は、2013年時点では純金融資産が5000万円以上1億円未満だった準富裕層と1億円以上5億円未満だった富裕層の多くが資産を増やし、それぞれ富裕層と超富裕層に移行したことが原因と分析。富裕層・超富裕層の純金融資産総額は合わせて12.9%増え、2015年時点で272兆円に達して2000年以降で最高になったと推計している。

 実質賃金が上がらず、控除や手当が減らされる一方の一般サラリーマンにとっては納得しづらい数字かもしれないが、株高などの影響で、富める者がさらに富むという状況になっているのだ。

 とはいえ、私が見聞する限り、日本の金持ちは資産のやり繰りや相続に悩んでいることが多い。彼らは、日本では最高で45%の所得税と55%の相続税を課せられるため、シンガポールや香港、ニュージーランドなどに移住するケースが少なくない。

 しかし、母国を離れた不便や寂しさを感じている人もいるし、相続税対策のために養子縁組をしたり、あえて借金をしたりして節税の工夫を凝らしながら、結局、大半の人が多額の資産を残して亡くなっている。

 その一方で、日本は周知の通り、国自体が莫大な借金を抱えている。国と地方の長期債務残高は1000兆円を突破し、GDPの2倍以上に達している。にもかかわらず、政府は毎年、過去最高の予算を組んで借金を増やし続けているため、もはや歳入で借金を返すという普通の方法では、問題を解決することが不可能になっている。

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