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ノーヘル・ナンバー無しで街を疾走する「違法モペッド」問題 販売店は「基本的に客任せ」、専門家は「今年中に必ず大問題になる」と警告

警視庁は4月10日にモペッドの一斉取り締まりを実施

警視庁は4月10日にモペッドの一斉取り締まりを実施

 見ようによっては自転車ともバイクとも言えそうな乗り物。最近、「モペッド」と呼ばれる、ペダルがついた電動オートバイが人気だ。公道を走るには免許やナンバープレート(自賠責保険の加入)、ヘルメット着用などが必要だが、そうしたルールを無視した「違法モペッド」が社会問題化しつつある。街を疾走するモペッドの“危うさ”について提起し続ける自転車評論家に取材するとともに、モペッドを販売する業者にも直撃した。フリーライターの池田道大氏がリポートする。

(プレミアム特集・全3回の第1回。第2回〈違法モペッド事故の先にある“地獄の賠償ロード” 自転車保険は適用されず「自己破産で免責されないケースも」〉に続く)

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 最近、街を歩いていると、黒光りするゴツい乗り物が歩道を我が物顔で突っ走る姿をよく見かける。運転者はペダルを漕いでいないのに、なぜあの得体のしれない乗り物は、路上を猛スピードでかっ飛ばせるのか——。そんな疑問を抱いている人は多いはずだ。

 謎の乗り物の正体は「モペッド」。「モーター(motor)+ペダル(pedal)」からできた造語で、その名の通りモーターとペダルを備えているが、バイクのようなスロットルがあり、ペダルを回さなくても走行できる。そのモペッドの代表的なタイプが、真っ黒い車体に太いタイヤを履いている「オラオラ系」だ。自転車評論家の疋田智さんが解説する。

深夜の歩道を無灯火・ノーヘルで疾走するモペッド(疋田智氏提供)

深夜の歩道を無灯火・ノーヘルで疾走するモペッド(疋田智氏提供)

「いま日本に蔓延しているモペッドの多くは中国製です。90年代後半に中国メーカーが自転車に電気モーターとバッテリーを載せて作ったのが始まりです。日本の電動アシスト自転車に似てますが、踏力センサーやアシスト率制御などがなく、単に自転車に電気モーターを付けただけの安価なシロモノでした。

 ところが、その後バッテリーの進化などで、パワーと航続距離がどんどんのびました。それが中国でバカ売れしたのです。いったん商売になるとなればメーカーが乱立して商品が余るのは、あの国のいつものパターンです。そこでブルーオーシャンとして日本市場に目を向け、中国製の電動自転車を日本人向けにネットで売るようになったんです。一見欧米っぽいのもありますが、国民生活センターが『問題あり』のモデルを調べてみたら100%中国製でした」

型式登録などがされていない10車種をテスト(国民生活センター2023年10月25日付の報道発表資料より)

型式登録などがされていない10車種をテスト(国民生活センター2023年10月25日付の報道発表資料より)

 ゴツい車体で自由自在に走り回る姿を見て、「わあ、カッコいい」と思う人もいるかもしれない。だが、ノーヘルで歩道を走るのは完全に違法だ。

「今年中にモペッドは必ず大問題になるでしょう」と疋田さんは語る。

「スロットルが付いたモペッドはフル電動でペダルを回さなくても自走できます。見た目は自転車っぽいですが、法律上の扱いは自転車ではなく、電動の原付バイクというカテゴリーに入ります。公道を走行するには運転免許が必要で、ナンバー登録をしてブレーキランプ、ウインカーなどの保安装備を取り付け、ヘルメット着用と軽自動車税(原付一種・二種・軽二輪)の納付、自動車損害賠償責任保険(自賠責)加入も義務付けられます。

 それなのに現在、公道を爆走するのはナンバープレートがなくノーヘルの“違法モペッド”がほとんど。これは原付バイクがヘルメット未装着で歩道を走行するのと同じです」(疋田さん)

時速30kmで走行する電動原付を一瞬で抜き去るほどの加速力があるモデルも(国民生活センターが公表したテスト動画より)

時速30kmで走行する電動原付を一瞬で抜き去るほどの加速力があるモデルも(国民生活センターが公表したテスト動画より)

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