これらの炎症細胞は、細菌やウイルスなどに感染したときに菌や異物を退治する免疫系の細胞ですが、生活習慣病によって本来働く必要がないにもかかわらず暴走しているのだと考えました。
特に内臓脂肪が大量に蓄積している場合、心臓の周辺にも脂肪が蓄積していることが多いことに気づきました。脂肪細胞はエネルギーの貯蔵庫の役割を担っていると思われていましたが、現在はアディポサイトカインという炎症ホルモンを分泌する内分泌器官であるとされています。内臓脂肪が大量に蓄積していると、本来溜まる場所でない心臓にも脂肪が蓄積し、アディポサイトカインが分泌されます。2010年ごろに、このアディポサイトカインが慢性的な炎症を引き起こし、血管にダメージを与えているということもわかりました。
健康な人でも心臓の冠動脈の周囲には少量の脂肪が付着してますが、通常はアディポネクチンという抗炎症作用のあるホルモンを分泌して炎症を抑制し、動脈硬化を防いでいます。
ところが、大量の脂肪が蓄積すると、TNF-αなどの悪玉ホルモンを分泌するようになり、動脈硬化を促進します。アディポサイトカインが分泌されると、血管の閉塞が軽度でも心筋梗塞を発症します。内臓脂肪の蓄積によって発症したメタボリックシンドロームが、動脈硬化を含む心血管系合併症の危険因子となっているというエビデンスが得られたのです。
メタボリックシンドロームの肥満は、皮下脂肪よりも内臓付近や内側に脂肪が蓄積している
事実、メタボリックシンドロームの肥満患者はTNF-α、IL-6、MCP-1といった炎症性サイトカインの血中濃度が上昇していることが確認されており、抗炎症作用を持つアディポネクチンが低下していることが明らかになりました。