動脈硬化は若いころから徐々に進行するが、血管そのものが外側に広がるので狭窄による症状に気づきにくい。おもに心筋梗塞は、血管の狭窄や閉塞よりも「プラーク破綻」によって生じる
動脈硬化は高齢者だけの病気ではなく、発見されにくいだけで幼少期から進行している。また、メタボで内臓脂肪が大量に蓄積すると、心臓にも脂肪が蓄積して、炎症ホルモンを分泌するアディポサイトカインが慢性的な炎症を引き起こし、血管にダメージを与えるという──。シリーズ「名医が教える生活習慣病対策」、徳島大学大学院医歯薬学研究部・佐田政隆教授が、生活習慣病と慢性炎症の関係について解説する。【慢性炎症と動脈硬化の関係・前編】
動脈硬化は幼少期から始まっている
私は循環器内科医として長い期間、心筋梗塞を発症し救急搬送された患者さんの治療に当たってきました。死の淵に立たされている患者さんの命をどうしたら助けられるのかと常に考える中で、「動脈硬化」に着目して研究を始めました。
動脈硬化は、高血圧や脂質異常症、喫煙など様々な危険因子によって血管に脂質が沈着し、血管壁が肥厚して血管の狭窄が徐々に進行して閉塞することで、虚血(血液が十分供給されない状態)から心疾患を発症すると長い間考えられてきました。
ところが、研究を進める過程で、半数以上の心筋梗塞患者は、血管の狭窄がそれほど進んでいない軽度の動脈硬化で発症していることに気づきました。さらに、血管の画像診断の進歩で、動脈硬化は中高年になってから発症するのではなく、幼少期から始まっていることがわかりました。これまでは高齢者の病気と思われてきましたが、生活習慣の悪化とともに進行するため、そのずっと前から始まっているということです。若いころは動脈硬化の病変部の血管が外側に広がるため、血管内の血流が保たれ症状が現われず、発見されにくいだけなのです。
また、マウスを使った研究を続けたところ、動脈硬化の周辺には脂肪細胞があり、細胞間には体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物を食べる細胞「マクロファージ」が浸潤し、そこからT細胞、B細胞など多数の炎症細胞が集簇(しゅうぞく=群がり集まる)していることを発見しました。