団塊世代の相続大量発生で起きること
しかしこの問題は公共工事だけの問題ではなくなってきそうです。これからの日本で確実に起こる「多死社会、大量相続時代」を経て空き家が増えていくことが、所有者不明土地の拡大につながる可能性がきわめて高いからです。
空き家は、すでに首都圏や関西圏といった大都市圏で増加していることについては触れましたが、特にこれから首都圏郊外を中心に戦前・戦中世代から団塊世代(1947~1949年生まれ)の相続が大量発生することが予想されます。今後の不動産市場における実需の減少を考えるならば、特に郊外ニュータウンなどにある親の家は早期に売却しないと、永遠に相続人の手から離れない、困った存在になる可能性が高いのです。
ところが、親の家というのは意外と厄介なもの。きょうだいで相続をして持分を共有で持っていたりすると、売ろうという決断がまったくできなくなりがちです。「親の想い」が詰まった家だからといっても、相続した子供たちは使うあてもなく、さりとて賃貸に出しても借り手がいないような家なのに、結局きょうだい間では「売る」という判断ができないままに家は放置状態に置かれます。
しかし、このドラマはこれで終わりではありません。おそらくさらにもう数年も経つと、この家のあるエリアのほとんどで相続が発生します。エリア内を歩いても人っ子一人歩いていないゴーストタウンとなり、管理が行き届かない家は草木が生い茂りエリア全体がスラムのようになっていきます。こうなるとさらに家は売れなくなり、最後は廃墟の群れに変わり果てていくのです。