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住まい・不動産
「空き家問題」の現在地

【九州全土を凌ぐ面積】全国の土地の約20%が「所有者不明」の衝撃データ、固定資産税や相続税などの税収減に直結する深刻事態に 団塊世代の相続大量発生で拡大必至

 そして、この家を相続したきょうだいにもやがて相続が起こり、彼らの子供へと否応なしに引き継がれていきます。この頃になると相続人である子供も親が残した厄介ものの家に関心を示さなくなるでしょう。それどころか相続したことを登記すらしなくなります。この繰り返しでがやがて「所有者不明土地」となっていくのです。

 すでに地方のぼろぼろになった空き家などは、所有者がわからなくなった家が大半で、自治体が行政代執行で空き家を取り壊しても、その解体費を請求する相手がわからないといった事態が頻発しています。

 所有者不明土地は国や自治体にとっても、固定資産税や都市計画税、相続税などの税収減に直結します。国は2018年に「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(通称・所有者不明土地法)」を定め、公共事業における収用手続きの合理化や地域福利増進事業に資するものでの使用権の設定、土地管理の適正化、所有者探索の仕組みの合理化など本格的な対策に乗り出していますが、所有者不明土地問題の入口にまさに空き家問題が横たわっているのです。

※牧野知弘著『新・空き家問題──2030年に向けての大変化』(祥伝社新書)より、一部抜粋して再構成

【プロフィール】
牧野知弘(まきの・ともひろ)/東京大学経済学部卒業。ボストンコンサルティンググループなどを経て、三井不動産に勤務。その後、J-REIT(不動産投資信託)執行役員、運用会社代表取締役を経て独立。現在は、オラガ総研代表取締役としてホテルなどの不動産事業プロデュースを展開している。著書に『不動産の未来──マイホーム大転換時代に備えよ』(朝日新書)、『負動産地獄──その相続は重荷です』(文春新書)、『家が買えない──高額化する住まい 商品化する暮らし』(ハヤカワ新書)、『2030年の東京』(河合雅司氏との共著)『空き家問題』『なぜマンションは高騰しているのか』(いずれも祥伝社新書)など。

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