コロナビールで爽快にスタート
麹漬け玉子は家でも作ってみたくなるほど深い味わい
開店時刻に店へ行くと、おお、もう、開店を待つ人がいるではないか。店が入っているビルには角打ちの電飾看板があり、1階にある店の軒下には大きな杉玉もぶらさがっている。
店内は、広々としていて、ちょっと驚かされた。私が角打ちを本格的に知ったのは角打ちが今もたくさん残る北九州市の広報誌の取材で、市内の角打ちを何軒も回ったときだ。もう19年も前のことになるが、そのとき巡り、その後、ことあるたびに足を運んだ角打ちはどこも、小さく、古びていて、ふと、10年、20年も前にひき戻されるような気分にさせる店が多かった。
しかしこの「カクウチカフェ フタバ」は違う。広々とした、お洒落な空間なのである。店名にもあるとおり、酒屋、というよりカフェなのである。
そんなことが影響したのか、私は1杯目の酒を、日本酒でも焼酎でもウイスキーでもなく、コロナビールにした。別にスカシてるわけではない。コロナは毎年、蒸し暑くなると自宅用にスーパーでまとめ買いをし、カットライムを突っ込んで飲む、というのが好きなのだ。夏の夕方、早めに仕事が片付いて、ひとっ風呂浴びた後などは、爽快で実にうまい。
季節としてはまだ少し早いけれど、夏の夕方の感覚を思い出しながらコロナを飲むのだ。
つまみは、作り置きの中から、麹漬け玉子と甘酒マヨネーズポテトサラダを選んだ。なんだか、それだけでホクホクした気分。昼日中から、とても得をした気分になっていた。
ハイスツールもおいてある立ち飲みカウンターが奥にあるのだが、私は入口に近いところのテーブル席を選んだ。
甘酒マヨネーズのポテトサラダも、麹漬けの玉子も、麹という発酵の素の底力によって、ぐんと丸みが増している。単なる味付け玉子でなく、深い味わいの、まさに漬け玉子なのだ。
これは、うまいな。ウチでもやってみたいが、さて、どうやるのか……。
そんなことを考えながらポテトサラダを口に運ぶと、これまた味わい深く、ほんのり甘く、いつも食しているポテサラにはないうま味が感じられる。
うーん。こういう味わいであるならば、コロナビールよりも最初から日本酒でいくべきだったか。そんなことを考えているところに、飲み友ケンちゃんがやってきた。
この冷蔵庫の前で悩む時間が幸せなのだ