住み替えで再び多額のローンを組むようになっては本末転倒(イメージ)
月々のローン返済額は生活に直結する大きな問題だが、とりわけ怖いのが、「定年後の住宅ローン破産」。日銀の利上げを受けて、3大メガバンクをはじめとする大手銀行5行は、4月1日に変動型住宅ローン金利を0.25%引き上げ、負担は確実に増している。収入が減っている中での返済額増加に、不安を抱える人も多いだろう。
そんな不安を解消するために、自宅を売却してローンを返済し、住み替えるという択肢もある。昨今は不動産価格も高騰しており、購入時よりも高く売却できるケースもある。60代男性のC氏は4000万円で購入した都内マンションを昨年夏に売却した。
「購入時より値上がりしていて、6000万円で売れました。そこから残りのローン1500万円を返済し、売却益から譲渡所得税などを差し引いても4000万円程のお金が手元に残りました。そのお金でダウンサイジングした地方のマンションを購入し、悠々自適に暮らしています」
住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」を運営するMFS取締役で住宅ローンアナリストの塩澤崇氏によれば、「首都圏に限れば、不動産価格は来年以降も上昇傾向が続くと見られている」とのことで、高値のうちに自宅を売却して残りのローンを返済し、住み替える選択肢はありそうだ。だが、注意点がある。ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢氏は言う。
「あくまで今住んでいる自宅が都心部などで、住み替えは地方といったケースでのみ成立します。今や都心は1億円超の物件も多く、売却益が大きくても、住み替え先を購入するのは難しい。売り時ではありますが、買い時ではない。その点を忘れてはいけません」(風呂内氏)
住み替えで再び多額のローンを組む……となっては本末転倒だ。ただし、変動金利が適用されても「5年ルール」があるため、月々の返済額がいきなり増えるわけではない。5年ルールとは、住宅ローンの変動金利が上昇しても、返済額は5年間据え置きになるというルール。金利上昇の局面では、「基本に立ち返り、節約と貯金を意識することが大切」と風呂内氏が続ける。
「返済額が変わらない5年の間に節約してお金を貯めておきましょう。その際、金利が2%まで上昇すると想定して備えることが望ましい。生活の質を変えないためにこの先いくら備えがあればいいのか、具体的にシミュレーションしておくと安心です」