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川辺謙一 鉄道の科学

大阪・関西万博のアクセスからわかる「多くの人を運べる」鉄道の圧倒的輸送力 来場者が増えると駅シャトルバスは限界に、鉄道の割合が加速度的に増加する

バスの輸送力が先に限界に達する

 以上のことから、地下鉄の輸送力は、定員分の旅客を運ぶ場合に限定すると、駅シャトルバスのそれの約4倍だと言えます。1便あたりのバスの台数を6台まで増やしても、【B】の地下鉄の輸送力には及ばないのです。

 このため万博では、駅シャトルバスの輸送力不足が予測されています。2025年日本国際博覧会来場者輸送対策協議会が2024年12月10日に発表した「大阪・関西万博来場者輸送具体方針(アクションプラン)第5版(最終版)」の7ページには、1日あたりの来場者数が11.9 万人に達すると、駅シャトルバスの輸送力が限界に達するとも記されています。

桜島駅前のバス乗り場。6台のEVバスが停車している。今年4月16日に筆者撮影

桜島駅前のバス乗り場。6台のEVバスが停車している。今年4月16日に筆者撮影

 これは、鉄道の輸送力の余裕が見込まれていることを示しています。バスは、定員以上の旅客を運ぶことがむずかしいのに対して、鉄道車両は、定員の2倍以上の旅客を運ぶこともあります。このため、1列車の乗客数が定員を超えても安全に運べる輸送手段として、鉄道の役割が注目されています。

万博会場の東ゲートに近いOsaka Metro夢洲駅。地下鉄は、輸送力の大きさが期待されている。筆者撮影

万博会場の東ゲートに近いOsaka Metro夢洲駅。地下鉄は、輸送力の大きさが期待されている。筆者撮影

【参考資料】
[1]「輸送力」・「鉄道用語事典」一般財団法人日本民営鉄道協会
[2]「大阪・関西万博来場者輸送具体方針(アクションプラン)第5版(最終版)」,2025年日本国際博覧会来場者輸送対策協議会,2024年12月10日

【プロフィール】
川辺謙一(かわべ・けんいち)/交通技術ライター。1970年生まれ。東北大学工学部卒、東北大学大学院工学研究科修了。化学メーカーの工場・研究所勤務をへて独立。技術系出身の経歴と、絵や図を描く技能を生かし、高度化した技術を一般向けにわかりやすく翻訳・解説。著書多数。

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