〈話している中に彼が非常な才物であるということと野放図(横着)な所もあるが珍しい豪の者であるということを見抜いた。そこで俺は宜しい一臂(いっぴ)の労を取ろうと決心した。その時彼も非常に困っているようだったから持合せの旅金五百円を全部遣(や)ってしまった〉
この引用に続ける形で、中島は頭山・金会談の意義につき、次のように記す。
〈この回想は、アジア主義史において非常に重要な意味を持っています。
頭山は、この面会で金玉均を「才物」「豪の者」と見なし、強い共感を覚えました。(中略)端的に言えば、頭山は金を気に入ったのです。
————よし、金玉均のためなら一肌脱いでやろう。
そんな気分に、頭山はなりました。
この瞬間、アジア主義は新しい局面に入りました。玄洋社のリーダー頭山満が本格的にアジア問題に関心を抱き、行動に移す基点がここに誕生したのです〉
続く後編記事では、頭山満らが「中国革命の父」孫文、インド独立運動家のボースらを支援したことで、近代日本が享受したリターンとは何であったかについて考察する。
■後編記事:「中国革命の父」孫文、「インド独立運動家」ボースを相次ぎ支援した頭山満 そこで得た“大きな信頼”は歴史を変える可能性すらあった【革命への投資】
【プロフィール】
島崎晋(しまざき・すすむ)/1963年、東京生まれ。歴史作家。立教大学文学部史学科卒。旅行代理店勤務、歴史雑誌の編集を経て現在は作家として活動している。『ざんねんな日本史』、『いっきにわかる! 世界史のミカタ』など著書多数。近著に『呪術の世界史』などがある。