尿路結石をやり過ごした末の痛み
威張ることではないけれど、私は30代初めに胃潰瘍を患って、年に2、3回は胃カメラをのんでいた。「いい? 検査の情報は医師だけに握られたらダメ。胃カメラ検査を受けたら、画像を自分の目でキッチリ見ないと」とF子に言ったことは一度や二度ではない。すると、「わかった! “科学の眼”で見るのね」と即座に返ってきた。科学の眼とは“あるものをありのままに見る”という意味で、幼なじみの私たちは、そんな話をするたびに小学校のときの理科教師の名前を出して笑ったっけ。
が、しかしよ。「科学の眼」と口では言っても、年をとると見えにくくなる。そんなことがわが身に降りかかってきた。
去年の暮れに尿路結石になって、夜中、救急車を呼ぼうかというほど痛い思いをしたんだけど、実はその半月くらい前に「もしかして血尿?」ということが何度かあったんだよね。そりゃあ、茶色のオシッコが出たらひっくり返るほど驚いて病院に駆け込むじゃない、普通は。ところがそのときの私は、「エッ?」とは思ったものの、「これは何かの間違い、気のせい、変なもの食べたのかも」とそんなことばっかり考えたの。で、やりすごした2週間後にドカーンと痛みに襲われた!
かかりつけ医に駆け込んで事情を話したら痛み止めを処方してくれて、泌尿器科にかかることをすすめられたのよ。でも私は行かなかった。だって痛くないんだもの。そしてさらに2か月たって婦人科でCT検査を受けたら、「膀胱にモヤモヤが映ってます」と診断された。もしや膀胱がん? いま、その結果を待合室で待ちながらこの原稿を書いている。
──結論。
私たちくらいの年齢になると、自分の顔なんか一日何分も見ないし、見たところで“うぬぼれ鏡”で見ているじゃない!? 他人が自分の顔を見ている時間の方がずっと長いし、その観察も正確なんだよね。だから、自分なんかアテにしちゃダメ! 中高年よ、他人の声に耳を傾けよ!! ま、それができないのが中高年なんだけどね。
【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。
※女性セブン2025年5月22日号