2つのキーワードで読み解く日本企業の今後のあり方
株式市場における米国の地位がこれからも揺るがないと予想するなか、日本企業の今後のあり方を清原氏は2つのキーワードで読み解く。
「ひとつは当たり前ですが、『海外展開』です。日本の人口は減り続け高齢化も進みます。移民を思いっきり導入すれば人口減を防げますが、日本人がそれを許容するとは思えません。私も個人的に大反対です。
そうした状況で売り上げを大きく伸ばそうと思えばやはり海外市場でしょう。内需が尻すぼみになっていく日本では、上手に利益率を確保しながら海外で売り上げを伸ばしていくしか迫力のある成長は達成できません。ただし日本人は英語が下手すぎて、『海外で活躍するしか裕福に生きていく道はない』という覚悟に欠けていると思います」
内需縮小、海外展開に伴って必然となるのが、2つめのキーワードである「経営統合による寡占化」だ。
「内需は基本的に縮小が続くので、経営統合で寡占度を上げていかないと利益は保てないし、外需を拡大しようとすれば海外拠点の整備のために規模が必要です。ところが日本の企業は数が多すぎて非効率すぎます。上場企業の数は今の半分程度でいいのではないかと思っています。
イオンが薬局チェーンを束ねようとするのは素晴らしく、ニデックの牧野フライス製作所買収提案も理に適っていますが、日本企業の経営統合の全体的なスピード感について私はかなり不満です。企業経営がどんどん効率化して利益が出るようになれば株主還元も増え株価が上がるようになります。機関投資家は事業会社に積極的に経営統合を促すべきです」
伝説の投資家の至言には、株価乱高下時代を生き抜くヒントがちりばめられている。
* * *
関連記事《【独占取材】資産800億円の投資家・清原達郎氏が明かす「暴落時に仕込んだ3銘柄」 トランプ関税ショックの見方と、米国株ブームの中で一貫して日本株に注力する理由》では、清原達郎氏によるトランプ関税ショックの分析と、そこで仕込んだ具体的な銘柄について明かしている。
【プロフィール】
清原達郎(きよはら・たつろう)/1981年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業。同年、野村證券に入社、海外投資顧問室に配属。スタンフォード大学で経営学修士号(MBA)取得後、1986年に野村證券NY支店に配属。1991年、ゴールドマン・サックス証券東京支店に転職。その後モルガン・スタンレー証券、スパークス投資顧問を経て、1998年、タワー投資顧問で基幹ファンド「タワーK1ファンド」をローンチ。2005年に発表された最後の高額納税者名簿(長者番付)で全国トップに躍り出る。2023年、「タワーK1ファンド」の運用を終了し、退社。はじめての著書『わが投資術 市場は誰に微笑むか』(講談社)が話題に。
※週刊ポスト2025年5月23日号