生前贈与を使って相続税を減らす方法とは(イメージ)
相続の手続きとは、結局のところ「名義変更」に尽きる。故人の財産の名義を変える際は膨大な書類が必要で、相続税を取られるケースも多いが、この手間を減らし、節税にもなるのが生前の名義変更だ。
なかでも、膨大な書類の提出や手続きに翻弄されるのが預貯金口座の名義変更だ。口座の名義は生前に変更することができないが、賢い方法がある。相続に詳しい税理士の相原仲一郎氏が解説する。
「暦年贈与を利用し、生前に資産を移動してしまうのです。年110万円までの贈与が非課税になる暦年贈与を使ってコツコツ子らに財産を渡していけば、将来の相続財産を圧縮することで相続税を減らすことができます」(相原氏)
ただし令和5年度税制改正により、2024年1月の贈与分から贈与した人が亡くなると直前7年分の贈与額が相続財産に戻されて相続税の課税対象になった。
「そこで検討したいのが相続時精算課税制度です。2500万円までの贈与が非課税になる制度なのですが、去年の1月から年間110万円の控除枠が新設されました。この控除枠は贈与者の死後も遺産に戻されません。
また、本来最大55%の贈与税率が2500万円を超過した部分についても一律20%に抑えられます」(同前)
株は“最も低い値”で贈与できる
他にも預貯金を生前贈与して得する制度はある。
「30歳未満の子や孫に教育資金を贈与する場合、教育資金の一括贈与の特例を利用すれば1500万円まで非課税で贈与できます。また、住宅取得等資金の贈与の特例を活用すれば18歳以上の子・孫への贈与が最大1000万円まで非課税になります」(同前)
銀行口座のなかでも特に定期預金は死後の名義変更が厄介になる。相続した人が定期預金を中途解約するまでお金を引き出せないケースが多く、普通預金と異なり葬儀代などの仮払い制度も使えないなど使い勝手が悪い。生前に本人が解約して普通口座に移し、前述の制度を活用して名義変更すれば死後、相続人にかかる手間を省略できる。
同時に多くの銀行口座を持っていると相続時に解約や名義変更の手間がかかるため、生前のうちになるべく整理しておくとよい。
「普通銀行だけでなくネット銀行なども1~2行に集約しておくことです」(同前)