いくら東京圏からの人の流れを太くしても…
石破首相は地方創生2.0を「令和の日本列島改造」と説明していただけに、随分小粒な政策が並んだ印象だ。多くの人から「掛け声倒れの内容で、拍子抜けした」「期待していただけに正直がっかりした」などの声も聞かれる。だが、問われるのは東京圏から全国各地への人の流れを太くする政策が、「人口減少が進む中でも経済成長、地域社会を機能させる」ことに適っているかどうかだ。
地方自治体という単位で捉えた場合、東京圏からの人の流れが太くなれば人口が増えたり、減少ペースが遅くなったりするところも出てこよう。だが、それは根本的な人口減少対策とは異なる。長続きしないのだ。
人口減少社会を、底に穴が開いた器に水が入ってる状態として考えれば分かりやすい。
東京圏に偏った人口を地方へと移すとは、器の水をかき回しているようなもだ。懸命にかき回してみたところで、水量が減り続ける状況を改善させられるわけではない。やがて水は枯渇し、かき回すことすらできなくなる。
私は内閣官房の「新しい地方経済・生活環境創生会議」(=有識者会議)の委員を務め「地方創生2.0」の基本構想の策定に向けた議論に直接関わってきたが、10回に及んだ会議においてはほぼ私1人だけが移住促進政策や関係人口政策に疑問を呈してきた。短期的な効果が見込めるからといって、これが逃げ口上になってしまうと、真に人口減少に耐え得る地方をつくることができなくなるためだ。
こうした分散政策の限界は、そう遠くない将来に顕在化するだろう。
■第2回記事:《東京都が人口減少に転じるのは時間の問題…それでも「東京一極集中」が続いている本当の理由》につづく
【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)など著書多数。小学館新書『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』が話題。