補助金を不正受給する中国系業者に接触を図った(写真:イメージマート)
会計検査院は昨年10月、2020年から3年間に約1億4755万円の「IT導入補助金」の不正受給があったと公表したが、中国のSNS上では「簡単に不正受給できる」と謳う業者が多数登場している。中国に詳しいライター・廣瀬大介氏がレポートする。
IT導入補助金の導入支援事業者である「ベンダー」だという中国系業者A社に接触して、その手口が判明した。次に別のB社にも接触を試みたが、彼らはどこまで違法性を認識しているのか──。【全3回の第3回】
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その後、ベンダーB社にも話を聞くことができた。B社は小紅書(中国版インスタグラム)で多岐にわたる助成金や補助金に関する情報を中国語で発信している。B社にもIT導入補助金について問い合わせのDMを送ったところ、ウィーチャットの通話に誘導され、30代くらいの中国人男性が説明を始めた。
「御社はIT導入補助金の申請を希望ですか? 御社の年間売上はどのくらいですか?」
こちらが質問に答えると男は徐々に不正の手口について語り始めた。キックバックの方法について、A社は現金による返金で、B社は関連会社からの振り込みという点では異なるものの、大まかな流れは両社とも共通していた。また、A社もB社も主に日本にある中国系企業を相手に申請サポートを行なっていることが会話から判明した。リスクを尋ねると自信ありげにこう答えた。
「違法性はありませんよ。御社は570万円という金額を実際に支払う訳ですし、謝礼も別会社を通じて支払いますのでリスクはありません。あくまで制度の抜け穴を利用しているだけ。弊社の社長はコロナ禍の時に日本でたくさんの補助金や助成金の制度があることに気が付いて、これを商売にしようと決めたんです。私たちは何年もの実績があるので大丈夫です」
後日、A社に取材であることを告げ、こうした行為の違法性の認識について尋ねたところ、担当者は焦ったように答えた。
「弊社は完全に政府の手続きに従って申請しています。キックバックなんてしていません。申し訳ありませんが、取材はお断わりします」