短い午睡のあとは、もう一軒
クセになること間違いなしのカシラの味噌焼き
午後3時を過ぎると、昼どきから飲んでは入れ替わっていた人たちの姿も、いったん引けてきた。夕方近くに潮が上げてくるまでの間、海の家で寝転ぶ真夏のけだるい午後みたいな感じ。こんなときは、短い午睡に限る。私たちは、それぞれ、ブラックニッカとデュワーズのハイボールを飲み干すと、店を出て、またJRに乗った。
空いている車内で目をつむり、気が付くと10分ほどしか経っていない。けれど、頭はすっきりしているし、外はまだ明るい。よし、もう一軒だ。
私たちが向かったのは蕨の名店「喜よし」(正しくは「喜」は「七」を3つ)。ここのカシラの味噌焼きを、ケンちゃんに食べさせたかった。店の大将とは、コロナ禍の前までは、競輪の年末のグランプリ観戦をよくご一緒していた。大宮の競輪のときもそうだったが、浦和の競馬とか、戸田の競艇とか、ふらふらと近くに来ては寄らせてもらってきた。ここのもつ焼きは、いつ食べても思わず、ニンマリ笑ってしまう。だから来たのだ。午前11時の赤羽で始まった昼酒は、夕方の蕨でまだ終わる気配がない。
なにしろ、レモンサワーが、うまい、うまい。
定食メニューにも魅力的な品が並ぶ老舗大衆酒場(「いづみや本店」埼玉県さいたま市大宮区大門町1-29)
開店は昼飲み後のもう一軒に最適な16時(「喜よし」埼玉県川口市芝森町2-11)
【プロフィール】
大竹聡(おおたけ・さとし)/1963年東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒。出版社、広告会社、編集プロダクション勤務などを経てフリーライターに。酒好きに絶大な人気を誇った伝説のミニコミ誌「酒とつまみ」創刊編集長。『中央線で行く 東京横断ホッピーマラソン』『下町酒場ぶらりぶらり』『愛と追憶のレモンサワー』『五〇年酒場へ行こう』など著書多数。「週刊ポスト」の人気連載「酒でも呑むか」をまとめた『ずぶ六の四季』や、最新刊『酒場とコロナ』が好評発売中。