会社がGPSの携行を強要するのは法的に問題ないのか(写真:イメージマート)
GPS機能が付いた社用携帯を従業員に持たせる会社もあるようだ。従業員の労働時間などを把握するためかもしれないが、会社側がGPS機能を使って従業員の位置情報を知ることができるのは法的に問題ないのだろうか。実際の法律相談に回答する形で弁護士の竹下正己氏が解説する。
【質問】
代理店の営業に転職。ビックリしたのは、会社からGPS機能付きのスマホを渡されたこと。外回りの際に、パチンコでもしていないかチェックするためだと思うのですが、信用されていないみたいで、残念な気持ちになっています。ともあれ、会社がGPSの携行を強要するのは、法的に間違っていませんか。
【回答】
GPS機能付きのスマホを従業員に持たせることで、会社はその位置情報を継続的に得ることができます。また、出退勤時刻をスマホに入力させ、位置情報と合わせて労働時間の把握も可能になります。
これにより、会社は業務の効率化や適切な人員配置が図れるというメリットがあります。しかし、その反面、四六時中監視されているようで、気分がよくない従業員もいるでしょう。
携行を命じられたスマホで、自分の位置情報が会社に把握されることに関する法的問題は【1】個人情報保護と、【2】プライバシーの侵害だと思います。個人の位置情報は、個人に関する情報ですが、特定の個人を識別する情報ではないため、個人関連情報に分類されます。
ただし、個人に関する位置情報が連続的に蓄積されて特定の個人を識別できる場合には、個人情報に該当します。つまり、会社が従業員の働きぶりを管理するのに、GPSで得られる特定の従業員の位置情報を継続的に把握してコンピューターなどに蓄積すれば、個人情報となります。
個人情報は、その利用目的を本人に通知し、適正に把握する必要があります。そこでGPS機能を利用するにあたり、位置情報を把握することについて、従業員に目的を明示するなどの手続きが必要です。この点はおそらく、会社内部でスマホ情報の利用についての説明などを行ない、労働者側も同意していると思われます。
次にプライバシーですが、勤務時間中の位置情報の把握は、前述した労務管理の目的から、やむを得ないと考えます。それでも勤務時間外は会社の監視下に置かれる理由はなく、勤務時間外も携行する貸与スマホで位置情報が知られてしまうのは、プライバシー侵害の可能性があり、位置情報発信機能をオフにしてもかまいません。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2025年7月18・25日号