地方ファンにとって高くなる東京遠征のハードル
仮に全国ツアーを取りやめ、東京近郊のアリーナ公演に切り替えるなら、地方からのファンが東京に遠征することも想定される。しかし地方のファンにとっては、不便なことも少なくない。
ここ数年で新設されたアリーナの多くは、横浜や千葉、都内でもお台場など、都心から少し離れた場所が多い。地方から遠征するファンにとってはアクセスが悪く、公演時間が押してしまうと、新幹線や飛行機の最終便に間に合わず、日帰りが難しくなるケースもある。宿泊するとしても、インバウンド需要で東京近郊のホテルの宿泊費は高騰しており、以前に比べるとお金がかかる。また、コンサートのチケット料金はアリーナクラスのほうがホールクラスよりも高く設定されることも多く、そもそもチケット料金自体が値上がり傾向にある。地方のファンにしてみれば、東京への遠征のハードルが高くなってきているのだ。
「音楽業界がコンサート重視の方向に進んでおり、その傾向とアリーナ会場の増加はリンクしていると言えますが、一方で金銭的な理由やスケジュールなどの理由で、気軽にコンサートに行けなくなってしまったファンも少なくないと思います。頻繁にコンサートに行ける音楽ファンと、そうではない音楽ファンとの格差が広まりつつあるようにも感じます。
アーティストサイドでも同様で、たくさんのアリーナ公演を開催してもそれが毎回ソールドアウトとなるような超人気アーティストはどんどん集客を増やし、そうではないアーティストは会場不足でコンサートの機会が奪われ、その格差は広がっていく。多様な音楽文化を支えていくという意味でも、アリーナ偏重になるのではなく、適度な規模のホールを確保することも重要なのではないかと思います」
中野サンプラザの再開発について中野区は、近隣住民との意見交換や市場調査を行ったうえで新たな計画を立てるという。中野サンプラザホールが音楽文化に対して担ってきた役割を考慮した形で、生まれ変わることを願う音楽ファンは少なくないだろう。