昼夜間定時制・通信制の都立新宿山吹高校。定時制には普通科と情報科がある
授業コマ数は朝から夜まで12時限。生徒は大学のように受けたい授業を選択し、卒業までに必要な単位を3年または4年を目処に取得。卒業後の進学実績には、東大や早慶などの難関大が毎年のように並ぶ──これは実在する“公立定時制高校”の話だ。フリーライターの清水典之氏が、定時制・通信制の“トップ校”として知られる都立新宿山吹高校の永浜裕之校長を取材。目覚ましい進学実績の秘密に迫る。
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学校法人角川ドワンゴ学園が運営するN高グループの生徒数が急増するなど、全日制高校に代わる選択肢として通信制高校に注目が集まるなか、もう一つの選択肢・定時制高校も近年は大きく様変わりしている。
文部科学省「学校基本調査」によれば、2024年度の時点で定時制高校は全国に613校あり、全体の約9割(587校)が公立である。夜に通学する「夜間」の定時制は、一般に全日制高校に併設され、これが全体の約7割。単独で設置され、朝や昼も授業をする「昼夜間」の定時制が約3割である。都立の桐ヶ丘高校や立川緑高校のようなチャレンジスクール(不登校期間が長く、学習や体験が不足している生徒の学び直しや学習支援などを目的にした定時制高校。都立は全7校)など、昔にはなかったタイプの定時制高校も誕生している。
かつてのイメージを覆す定時制高校のひとつに、都立新宿山吹高校がある。1991年に東京都が開校した新しいタイプの高等学校で、昼夜間の定時制(普通科・情報科)と通信制を併設。定時制は単位制・無学年制で、学習指導要領に定められた卒業に必要な単位を修得すれば、3年で卒業できる。制服も校則もない自由な学校で、生徒の意志を尊重する一方、不干渉主義で、生徒は自己管理が求められる。入試の偏差値は50前後とされているが、毎年、東大や早慶など難関大の合格者を輩出する、都内の定時制・通信制の“トップ校”だ。
同校の永浜裕之校長に話を聞いた。
「当校では、生徒はクラスに所属しますが、クラス単位で動くことは基本的にありません。朝8時40分から夜9時20分まで、1日12時限あり、大学と同じような単位制なので、生徒はクラス単位で授業を受けることはなく、自分で選択した授業をバラバラで受けます。文化祭や体育祭も自由参加で、やりたい人がやるだけ。だけど、やりたい人だけでやるから意外に盛り上がるようです。
放課後というものが存在しないので、部活に参加するには、顧問の先生が授業をしていない時間帯に、部員が、登録していない共通の授業を調整して空き時間に合わせて活動しています」(永浜校長・以下同)