都立新宿山吹高校の永浜裕之校長に話を聞いた
近年、定時制高校や通信制高校が、いじめや心身の不調をきっかけにした不登校経験者や高校中退者らが高校卒業資格を得る場として注目されている。なかには、難関大合格者を毎年のように輩出する“トップ校”も存在する。フリーライターの清水典之氏が、定時制や通信制高校の新たな潮流をレポートするシリーズ「通信制・定時制高校の今」。N高グループの校長にインタビューした前回記事に続き、今回は定時制・通信制の“トップ校”として知られる都立新宿山吹高校の永浜裕之校長を取材。難関大進学を目指す生徒にも選ばれる存在となった定時制・通信制高校の姿に迫る。
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チャレンジングスクールなど、新しいタイプの定時制高校も誕生
学校法人角川ドワンゴ学園が運営するN高等学校・S高等学校・R高等学校(2025年4月開校)の生徒数が急増している。N高校が開校した直後の2016年5月、生徒数は1570名だったが、9年後の2025年3月末時点でN高・S高の合計で3万2613名と、20倍以上に膨れあがった。
こうしたN高・S高・R高の躍進をきっかけに、全日制高校に代わる選択肢として通信制高校に注目が集まるなか、もう一つの選択肢・定時制高校も近年は大きく様変わりしている。
昔は定時制高校というと、いわゆる“ヤンチャな子”たちと、さまざまな事情で高校に通えなかった社会人が集まる学校というイメージを持つ人も多かったかもしれないが、今は通信制と同様、不登校の生徒の受け皿としての機能も果たすようになった。
通学が基本の定時制高校には定員があり、通信制のように生徒数が激増しているわけではない。それどころか2013年に全国で669校あった定時制高校(全日制との併置を含む)は、2024年には613校に減った。東京都でも2026年度から6校の夜間定時制で生徒募集を停止する。
その一方で、都立の桐ヶ丘高校や立川緑高校のようなチャレンジスクール(不登校期間が長く、学習や体験が不足している生徒の学び直しや学習支援などを目的にした定時制高校。都立は全7校)など、新しいタイプの定時制高校も誕生している。
文部科学省「学校基本調査」によれば、2024年度の時点で全国613校の定時制高校のうち、全体の約9割(587校)が公立である。夜に通学する「夜間」の定時制は、一般に全日制高校に併設され、これが全体の約7割。単独で設置され、朝や昼も授業をする「昼夜間」の定時制が約3割である。
昔の定時制のイメージを覆す定時制高校を1校、紹介しよう。都立新宿山吹高校は、1991年に東京都が開校した新しいタイプの高等学校で、昼夜間の定時制(普通科・情報科)と通信制を併設している。定時制は単位制・無学年制で、学習指導要領に定められた卒業に必要な単位を修得すれば、3年で卒業できる。制服も校則もない自由な学校で、生徒の意志を尊重する一方、不干渉主義で、生徒は自己管理が求められる。
新宿山吹の永浜裕之校長に、不登校経験者の入学実態について聞いた。