金利が上昇するとどんな影響があるか(写真:イメージマート)
7月23日、日本の長期金利が急上昇し、一時1.6%に達した。これは2008年以来17年ぶりの高い水準だ。金利の変化は、暮らしや経済全体にさまざまな影響を与える。金利が上がる背景と、それがもたらす影響とは。『世界一楽しい!会社四季報の読み方』などの著書がある個人投資家で株式投資講師・藤川里絵さんが解説するシリーズ「さあ、投資を始めよう!」。第153回は、「長期金利の上昇」について。
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2025年7月23日、日本の長期金利が急上昇し、一時1.6%に達しました。これは2008年以来17年ぶりの高い水準です。金利の変化は、私たちの暮らしや経済全体にさまざまな影響を与えます。今回は、金利が上がる背景と、それがもたらす影響について分かりやすく解説します。
金利が上がった理由は?
まず、「金利が上がる」とはどういうことでしょうか。ここで言う「長期金利」とは、主に10年物の国債の利回りのことを指します。国債は政府が発行する債券で、投資家がこれを買うと政府にお金を貸す形になります。国債の人気が下がって売られると、その価格は下がり、逆に利回り(儲け)は上がる仕組みです。
今回の金利上昇のきっかけは、トランプ米大統領が発表した日米間の関税交渉の合意です。これまで投資家の間では、米国が日本に対して厳しい関税を課すのではないかとの懸念から、リスクを避けようとする動きが強まり、安全資産とされる日本国債が買われていました。ところが予想に反して、相互関税が25%から15%に緩和される見通しとなったことで、「最悪の事態は避けられた」との安心感が広がり、その結果、国債を手放す動きになりました。国債が売られると価格が下がり、利回りは上昇します。
さらに、関税緩和によって日本経済への悪影響がやや軽くなるとみられたことで、「日銀が将来的に利上げに動くのではないか」との見方も出てきました。これも金利の上昇を後押しする要因となっています。
また、政治の不透明感も影響しています。参院選で与党が過半数を割り、石破茂・首相の退陣も噂される中、次の政権では財政拡張的な政策が採られるとの観測が浮上しています。財政規律が緩むとの見方から、国債の信頼性が相対的に下がり、売られる流れが加速しました。