顧客を軽視した強引な“営業”の懸念
経営状況の悪化を食い止めようと、銀行が顧客を軽視した強引な“営業”を行なうことも考えられる。その一例が、スルガ銀行の「不正融資問題」だ。同行では投資用不動産向け融資で審査を通りやすくするため、書類を改竄するなどの不正を行なっていたことが発覚した。
また、リスクの高い金融商品(仕組み債)を説明不十分のまま顧客に販売・勧誘していたとして、金融庁は2023年、千葉銀行(不良債権比率は0.91%で95位)と、同行と提携する武蔵野銀行(同1.59%で61位)に業務改善命令を出した。仕組み債は銀行側が受け取る手数料が多く、重要な収益源だったという。
「顧客を裏切る行為ですが、本来の業務だけで立ちゆかないと判断した銀行が、新たな金融商品の取り扱いなど業務の拡大や数字を追い求めた結果、起きた問題でもあります。現在は各行ともコンプライアンスが徹底されていますが、依然として営業部門に数字のプレッシャーがかかりやすい状況は続いていると思われます」(浪川氏)
仕組み債で行政処分を受けた2行に改善策を尋ねると、それぞれ次のように回答があった。
「組織体制・評価体系の見直し等を実施し、業務改善計画のすべての施策の実施が完了しました。引き続き全社をあげてお客さまをはじめ関係者の方々からの信頼回復に努めてまいります」(千葉銀行広報部)
「(仕組み債の顧客への)紹介基準を改めて制定のうえ運用しているほか、様々な改善施策を実行しながら、お客さま本意の業務運営の実践と健全な組織文化醸成を目指しております」(武蔵野銀行IR広報室)
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※週刊ポスト2025年8月15・22日号