「全然縛りがない」「縛りだらけ」の両極端な業界も
扱う商品が高額になれば、簡単に自社製品を買うわけにはいかない。大手不動産デベロッパー勤務のDさん(40代/男性)は、入社以来ずっとマンション販売に携わってきたが、自分は自社のマンションどころか、全く関係ない会社が販売した一戸建てに住んでいる。
「住めるものならウチの会社のマンションに住みたいですが、扱う物件がハイグレード過ぎて、とても手が届きません……。一戸建てを選んだのは、ペットが飼いたかったからというだけです。そもそも、外車のディーラーのスタッフが全員外車に乗っているわけではありませんよね? それと同じで、家の購入は動くお金が大きすぎる。不動産業界で、自社の物件を買えなんて圧力がかかった話は聞いたことがありません」
まったく逆なのは、アパレル勤務のEさん(40代/女性)だ。
「お店に出る時は、必ずブランドの服を着るのがルール。社販の割引はありますが、セールになれば普通にセールのほうが安い程度の割引率です。シーズンが変わる度に最新商品を買わないといけないので、それだけでなかなかの額が吹っ飛びます」
使用頻度が高い商品を扱う会社はどうか
菓子メーカー勤務のFさん(30代/男性)は、自社のお菓子を買うことが「まずない」という。別にお菓子を食べないわけではないのに、なぜか。
「オフィスには自社製品が一通り並べられていて、好きなだけ取って良いシステム。自社製品のラインナップは把握しておけという意味だと思いますが、その“弊害”というべきか、常日頃タダでポリポリ食べているので、わざわざお金を出して買う気が起きません」
ビール会社の営業マンのGさん(50代/男性)は、「自分としては、自社製品はマスト」だと語る。
「自分が店を選べる立場なら、自社製品を扱っていない店に入ることはまずありません。プライベートで友達や家族とお店に入り、他社のビールしかなければそれを飲みますが、“どうやってウチに変えさせてやろうか”とか、仕事のことを考えてしまいます。もちろん会社に『自社のビールしか飲んではいけない』なんて明文化されたルールはありません。ただ、どこで誰が見ているか分からないので、他社のビールを美味しそうに飲んでいる姿を万が一にも見られたくないという感覚はあります」
飲料を扱う食品メーカーに務めるHさん(40代/女性)は、「他社製品の飲料を飲んでいるのを部長にみつかり、注意を受けたことがある」と話す。
「経営企画部だった時、毎朝、スターバックスのコーヒーを買って出社していたんです。そうしたら、部長に呼び出されて、“社内でも自社製品を牽引する立場なのに、その姿勢はいかがなものか”と言われたことがあります。当時うちが出していたのは缶コーヒーで、スタバのようなドリップコーヒーはまた全然別なんですよ。思わず私が飲みたくなるような缶コーヒーをつくってくれと反論し、その後もスタバ生活を続けました。ちなみに、その後飲料部門から撤退してますけどね」
愛社精神が試されているのか否か、業界によって考え方は色々あるようだ。