閉じる ×
閉じるボタン
有料会員限定機能の「クリップ」で
お気に入りの記事を保存できます。
クリップした記事は「マイページ」に
一覧で表示されます。
マネーポストWEBプレミアムに
ご登録済みの方はこちら
小学館IDをお持ちでない方はこちら
田代尚機のチャイナ・リサーチ

高成長が続く中国ロボット産業の最前線 宇樹科技の王興興CEOは「人型ロボット開発は1~3年後に臨界点に」実用化のために解決すべき課題とは

8月に北京で開催された「世界人型ロボット大会」で疾走する宇樹科技のロボット(Getty Images)

8月に北京で開催された「世界人型ロボット大会」で疾走する宇樹科技のロボット(Getty Images)

 中国経済に精通する中国株投資の第一人者・田代尚機氏のプレミアム連載「チャイナ・リサーチ」。中国の人型ロボット開発の最前線についてレポートする。

 * * *
 中国を代表する人型ロボットメーカー“宇樹科技”の王興興CEOは8月9日、2025年世界ロボット大会に出席した際マスコミの取材を受け、次のように発言している。

「大規模言語モデルではChatGPT公開をきっかけに普及が急速に進んだが、現在の人型ロボットでは、そのような臨界点には達していない。ただ、関連各社はどの部分をどのように改善すればよいのかといった開発の方向性について、既に答えを見つけ出している。1~3年後、遅くても3~5年後には臨界点に達するだろう」

 工業情報化部によれば、2024年における中国ロボット産業全体の売上高は2400億元弱(4兆9200億円弱、1元=20.5円)。今年上半期における増収率は27.8%増で高成長を続けている。また、工業用ロボット市場では中国は12年連続で世界最大の需要国であり、医療、物流、介護といったサービス業向けから宇宙探査、深海探査、救急医療といった分野に至るまで、ロボット利用が進んでいる。

 もっとも、人型ロボットについては、これから実用化が始まろうとしている段階だ。普及率が急速に高まる臨界点に到達するには、解決しなければならない問題が山積みされている。

人型ロボット実用化までに解決すべき仮題

 まずAIのレベルアップが不可欠だ。現段階では、物体認識や、文脈に応じた動作生成が不安定だ。物理法則の推論可能な基盤モデルやVLA(視覚、言語、動作)モデルなどの開発が進んでいるが、依然として能力が足りない。

 電池については、エネルギー密度、持続性(連続使用可能時間)の点で改善が必要である。関節部品、骨格構造などの素材に関しては、金属と比べて軽く、耐久性に優れたPEEK樹脂が使われているが、コストが高いこと、量産できないといった問題が指摘されている。

 高い精度が求められる関節に使われる減速機については、現時点では歩行や物をつかむ際の不具合が大きい。でこぼこした地面の歩行や、突発的な外力への対応についても実用化のレベルには達していない。前者については、高精密加工技術、生体力学を応用した制御アルゴリズムの面で技術力の向上、後者については荷重センサー、MPC(モデル予測制御)のレベルアップが必要だ。

 そのほか、VRによるシミュレーションと現実の乖離の問題、実際の環境での大規模データが不足しているといった問題もある。大量生産に当たっては、精密減速機、高トルクサーボモーターなどの供給能力が低く、サプライチェーン全体を強化する必要がある。

次のページ:米国がリードしている面、中国がリードしている面

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。