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ビジネス

《『鬼滅』盗撮で逮捕者も》映画業界を長年悩ませる“著作権侵害との戦い”の歴史 海賊版、違法配信サイト…ファスト映画作成者に「5億円の損害賠償」を命じた判決も

映画の本編上映前でおなじみの「NO MORE 映画泥棒!」(「映画館に行こう!」公式サイトより)

映画の本編上映前でおなじみの「NO MORE 映画泥棒!」(「映画館に行こう!」公式サイトより)

著作権侵害で損害賠償金5億円の支払いを命じる判決も

「映画の盗撮の防止に関する法律」が施行された後に、映画館で盗撮者が現行犯逮捕されるニュースが数件流れ、いずれも刑罰に処されていったこと、そしてこの啓発CMもじわじわと浸透していったことで、盗撮防止、海賊版の流通の抑止に一定の効果を発揮していきました。

 2002年には、日本コンテンツの海外展開の促進と海賊版対策を目的として、経済産業省と文化庁の呼びかけで、一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)が設立されています。

 それでも本格的なデジタルシネマ、ネット時代となると、映画の違法配信サイトが溢れ、著作権者と違法行為者とのイタチごっこも深刻化。2020年10月からの法改正で、映画館での盗撮や違法な動画配信についての罰則が厳しくなると、盗撮や海賊版による被害ではなく、ネット時代ならではの新たな被害も生まれました。そのひとつが“ファスト映画”と呼ばれる違法サイトによる被害で、著作権者に無断で映画の内容を10分程度に編集して動画サイトに投稿するものです。

 2020年のはじめから10月下旬ごろまでに、東宝が著作権を持つ『アイアムアヒーロー』『告白』など合計13社の54作品のファスト映画を作成し、YouTubeにアップロードして広告収入を不当に得ていたとして、共謀した3人が2021年6月23日に逮捕されました。同年11月16日に3名とも有罪判決を受け、12月1日に判決が確定しています。

 そして、CODAと日本映像ソフト協会(JVA)の会員企業13社が原告となり、この被告3人に対する損害賠償請求訴訟を2022年5月19日付けで東京地方裁判所に提起。当該ファスト映画の再生数は合計約1000万回に上り、原告13社は損害額を20億円相当であるものと算定して、最低限の損害回復を求めるものとして5億円の一部請求を支払いとして求めました。

 2022年11月に先に2人に対して、2023年8月にもう1人の男性に対しても、著作権侵害による損害賠償金5億円の支払いを命じる判決が言い渡されました。

 ちなみに、2021年6月14日にCODAが実施した調査では、55のチャンネルから約2100本のファスト映画が公開され、その視聴回数は4億7700万回以上に上っていたとしています。

※和田隆著『映画ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)より一部抜粋して再構成。

【著者プロフィール】
和田隆(わだ・たかし)/映画ジャーナリスト、プロデューサー。1974年東京生まれ。1997年に文化通信社に入社し、映画業界紙の記者として17年間、取材を重ね、記事を執筆。邦画と洋画、メジャーとインディーズなどの社長や役員、製作プロデューサー、宣伝・営業部、さらに業界団体などに取材し、映画業界の表と裏を見てきた。現在は映画の情報サイト「映画 .com」の記者のひとりとして、ニュースや映画評論などを発信するとともに、映画のプロデュースも手掛ける。プロデュース作品に『死んだ目をした少年』『ポエトリーエンジェル』『踊ってミタ』などがある。田辺・弁慶映画祭の特別審査員、京都映画企画市の審査員も務める。

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