代金支払いを拒否できるか(イラスト/大野文彰)
中学校や高校の文化祭やクラブ活動では、生徒たちがおそろいのTシャツを作る機会も珍しくない。特別に注文して作ったそのTシャツが、もしも文化祭などの当日に間に合わなかった場合、注文をキャンセルできるのか? 実際の法律相談に回答する形で弁護士の竹下正己氏が解説する。
【質問】
高校生の息子がクラブ活動のイベントのために、部員20人分のオリジナルTシャツを注文。ところが、イベント当日までにTシャツが届かなかったため、業者にキャンセルを依頼しましたが、「商品は用意したのでキャンセルできない」と言われました。
イベントに間に合わなかったTシャツを購入する意味はなく、代金を支払いたくありません。(三重県・47才・主婦)
【回答】
売買で、品物が納期に間に合わないのは売主の債務不履行です。債務不履行は契約を解除する理由になりますが、解除するためには、1週間や10日などの相当な期間を決めて履行を催告し、その期間内に履行がないことが条件になります。
解除すれば代金の支払い義務はなくなりますが、相当期間内に納品されれば解除できないので、代金支払い義務は免れません。遅れたことにより発生した損害があれば、その賠償を請求できるだけです。これが通常の取引です。
しかし、「定期行為」という例外があります。物の引き渡しやサービス提供を約束した契約で、一定の日時や期間内に目的物を引き渡したり、サービスを実行しないと意味がなくなってしまう行為のことです。