代金の支払い義務は発生するのか(イラスト/大野文彰)
レストランで確実に快適な食事をするため、事前に予約することは多いだろう。しかし、時には体調不良などの不測事態によって、予約をキャンセルせざるを得なくなることもある。そういった場合、本来の代金を支払う義務はあるのだろうか。実際の法律相談に回答する形で弁護士の竹下正己氏が解説する。
【質問】
娘たちが私の誕生日祝いにレストランのランチを予約してくれました。ところが、当日になって次女の同僚が体調不良で救急搬送され、次女は出勤しなければならないことに。レストランに事情を話してキャンセルしたのですが、代金の支払いを要求されました。事前に「当日キャンセルの場合、代金を支払う」と聞いていませんでしたが、支払う義務はありますか。(兵庫県・70才・主婦)
【回答】
レストランの予約は、特定の日時に代金を払って、ある料理の提供を受けることを約束した契約です。客のキャンセルは、この契約の合意解除の申し込みで、店側には応じる義務はなく、代金全額の請求もできます。
その場合は契約が残るので、店の料理提供のサービスを実施する義務が残ったままになります。店が料理を準備していたのに、客が来店せず代金を支払わなかったら、客が契約に違反する債務不履行をしたことになり、店は契約を解除して自分の債務を消滅させて、客に賠償を請求できます。
しかし、事前に客が来店しないことを明確に申し出ていなければ、店は料理の準備をすることが必要で、こうした事態は店にとっても煩わしいことです。
その店の対応が、
【1】あなたのキャンセルに応じない
【2】キャンセルに応じる条件が代金支払い
【3】あなたの違約を前提に賠償として支払いを求める
これらのどれかわかりませんが、【1】の場合や、【2】であなたが代金支払いを拒否した場合でも、店は賠償として請求することになると思います。