ワイヤー入りガラス窓は、ワイヤーの熱膨張で割れることがあるのは知られており、猛暑のために割れたのであれば、明らかに賃借人の原因ではありません。しかし、物がぶつかった衝撃によってもガラスは割れます。家主との間で原因に争いがあるとするならば、窓の位置や太陽光の照射条件、割れ方、割れの起点の痕跡などから判断することになります。
とはいえ、家主側で賃借人側の原因を証明できない場合は原則どおり、修繕は家主の責任です。家主に修繕を求め、業者手配などに通常必要な期間を経過しても修繕しないときには、賃借人が修繕して、費用を家主に請求できます。また、支払ってくれないときは、家賃から差し引くことも可能です。
小さなひび割れでも放置しておくと、賃貸借終了時に原状回復を求められる可能性があります。ただし、賃借人は賃貸物の自然損耗を原状回復する義務がありません。そこで家主に連絡し、猛暑の今夏に熱膨張で発生したことを認識させておくのも必要となります。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2025年10月10日号