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中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

「平社員に戻してください…」30代でいち早く課長になったメーカー社員に決定的に欠けていた“管理職としての資質” 仕事量に押しつぶされ自ら降格を申し出るまで

「管理職からヒラに戻してください」

 ここまで来ると精神的に参ってしまい、産業医に相談したA氏。事態を深刻なものと受け止めた産業医からは休職を検討するよう伝えられ、その後は上司と人事と話し合いをして、半年間の休職期間を与えられた。それまでのA氏のポジションには、「課長代理」だった人間が就いた。休職中も給料は8割もらえたため、生活は苦労しなかったが、復帰が近付くと根本的に自分が管理職に向いていないことを痛感せざるを得ず、復帰直前に再び産業医のところへ。すると、「あと2ヶ月は休職期間を伸ばした方がいいのでは」と提案されたという。

 そうした経緯を経て、再び上司と人事と打ち合わせをした時、A氏はついに「管理職からヒラに戻してください。私は管理職として出世をしたいとは思いません」と伝え、休職明けからは役職なしの現場プレイヤーに戻ることとなった。

――この話を聞き、私が会社員時代に上司だった管理職は、部下に仕事を振るのが上手な人が多かったな、ということを思い出しました。上司は時に「えぇ? やってくれなくちゃオレ、困っちゃうな……」と弱音を吐くこともあった。そうなると部下は「色々、接待飲み会とか大変なんですよね(笑)。はいはい、やっておきますよー」となり、「ありがとな」とニヤリと笑う。

 また、クライアント企業から信頼され、同社のメディア論調分析のレポートを毎月作っていた上司が管理職になった時は、キビキビと仕事を振り、「なんか問題あったら報告するように」とすっかり管理職モードに。しかし、クライアントからは「あの分析レポートは今後もあなたが作って、解説してくださいよ」とまで言われました。この人は、他の人では代替できない一部の現場仕事は残していたのです。

 完全に部下に仕事を任せるタイプも一部の現場仕事は自分で請け負うタイプも、どちらのタイプの管理職も部署に売上をもたらすという意味では優秀な人材でしょう。ただ、A氏のように結果的にすべての仕事を自分でやってしまうようになると、管理職として破綻してしまうのでは。

 とはいえ、現場のプレイヤーの貢献なくしてチームは成り立たない。だからこそ、会社にはプレイヤーを大切にしてほしいという思いがあります。ずっとプレイヤーでい続けたく、管理職をやりたくない人も社内で昇給できる報酬体系にすべきなのではないでしょうか。人には向き不向きがあるのです。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は倉田真由美氏との共著『非国民と呼ばれても コロナ騒動の正体』(大洋図書)。

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